片付けられないのは
535



私は製造部門にいますので、その経験から在庫管理の基本を少々書いてみます。

在庫管理は@固定ロケAゾーン管理B仮置きの3つが基本です。

@固定ロケはその品目について置く場所を一箇所に決める、というもので、出し入れが頻繁なものが対象になります。家庭用品で言えば、はさみ、ホチキス、印鑑、爪切り、・・・といったものがこの固定ロケに当たります。

Aゾーン管理はその品目について、置く区画を決めるというもので、決められた区画(ゾーン)のなかではどこに置いても構わない、という置き方です。出し入れがさして頻繁でないものが対象で、家庭用品で言えば、本とか洋服とかがこのゾーン管理に相当します。本棚、クロゼットという区画(ゾーン)のどこかに置くわけです。

B仮置きは読んで字のごとしで、一時保管です。納品の荷受けをした時には、いきなり固定ロケ、ゾーン管理にはできず、受付で仮置きが必要です。家庭用品で言えば、配達された新聞をテーブルに置く、届いた宅急便を玄関に置く、読みかけの本を机の上に置く、というのがこれに相当します。

さてコーチングをやっていると、整理整頓ができないという人が多いです。整理整頓ができていない状態というのは、必ずこの@〜Bのバランスが崩れている状態です。その多くは仮置きが多すぎる、というもので、どこに何があるか記憶しておくのも限界があり、都度探し物をする必要がある、というものです。

整理整頓するとは、この仮置きを固定ロケもしくはゾーン管理に移すことなのです。固定ロケの品目は限られているので、これは単に戻せばよいのです。しかし、ゾーン管理に移そうとしても、区画(ゾーン)が一杯で、移すことができないことがしばしばあります。実はこれが整理・整頓ができない最大の理由なのです。

たとえば本棚が一杯、クロゼットが一杯なら整理整頓は一苦労でしょうし、整理整頓しても労が報われず、また片付かない状況がすぐやってきます。

整理整頓がうまいということは、このゾーン管理の拡張性をいかに持たせるかに尽きるのです。拡張性のないゾーン管理だと毎回ゾーンの区画を再設定しなければなりません。これでは負担が大きすぎてまず片付きません。また片付いたとしても、ゾーンを動かしているので、探し物が頻発します。

たとえばよく音楽CDを買う人がいたとします。CDをジャンルごとにラックに並べておくにしても、端からぎっしり詰めていく並べ方より、ジャンルごとに余裕をもたせて区画しておいた方が、CDが増えてきた時に、整理整頓はずっと楽です。

ゾーン設定はどの人も片付けるときに頭の中でやっているのですが、とにかくゾーンの拡張性を計算にいれること、これが整理整頓の極意です。拡張性があるなら仮置きを単にゾーン管理に移動するだけで済むからです。

ゾーン管理の発想がない人もいます。この人はすべてを固定ロケ管理にしようとします。固定ロケ管理ですから、出し入れが頻繁なものも、そうでないものも、余裕なくぎっしり詰め込もうとします。

あるクライアントさんは、これまで整理整頓しても、ゾーン管理という考えがまるでなかった、ゾーンはいつもキチキチだった!と言っておられました。ゾーン管理の発想がなければ、ゾーンの拡張性などのぞむべくもありませんね。この状態で単に、

「ものを片付けるにはどうしたらいいと思いますか」

と尋ねるのはナンセンスでしょう。まずは在庫管理の基本とゾーンの拡張性の大切さをわかってもらう必要があるのです。

クロージング
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営業の最後の詰めはクロージングです。つまりいろいろ商品の話をした後で、

「では、ご注文をいただきたいのですが、いかがでしょうか」

と迫るわけです。英語のビデオでは"Ask your order and get it."と言っていました。この
あたりは洋の東西を問わず同じですね。そして注文が取れると、

「ありがとうございます」と心からうれしそうに言うのがコツです。それで相手が撤回できなくなるからです。

なかなか注文をくれない時は、

「なんとかお願いします」
「儲けさしてくださいよ」

と言ったりします。

コーチングで同じクロージングができるでしょうか。やっぱり、

「なんとかお願いします」
「儲けさしてくださいよ」

は論外でしょうね。それに、

「ご契約いただきたいのですが、いかがでしょうか」

も抵抗あります。モノを売るのなら何の抵抗もないのですけどね。やっぱりコーチングは塾の先生、ピアノの先生と同様の「先生稼業」なので、「売り込み」が馴染まないのでしょう。

やっぱりコーチングを受けていただくに当たっての先方の心配や懸念をひとつひとつ解決して、相手から、受けたい、と言っていただく必要があると思います。

ただこれはいえます。

相手が「コーチングを受けたい」と言った場合、心から喜んでいる様子を見せるべきだ、ということ。ここでもったいをつけても始まらないですね。事実、うれしいんだし、この点だけはモノを売る時と同じでいいと思います。

親切は自己承認が引き寄せる
533



自信を回復したり、もともとなかったところに新たに自信をつけると、人生の見え方が変わってくるのは事実です。

今までこちらが挨拶しても応答もしなかった人が愉快そうにうなずくようになります。今まで自分に辛らつで軽蔑してきた人たちが丁寧に挨拶するようになります。まことに不思議なことですが、これは事実です。私は自己承認を失っていた時期と、自己承認を回復した時期がわりに接近しているので、この感覚は自ら体験しています。

なぜか。やはりこの世は親和の法則が作用していて、類が類を呼ぶ世界なのです。自信に満ちた雰囲気や振る舞いが、他人から親切や善意といった良き側面を引き出すのでしょう。それがさらにこちらの親切や善意を呼び出す、といった善循環に入るからだと思います。

これからすると、自己承認できない場合は、他人からもいよいよ馬鹿にされ、いよいよ辛い日々を送らなくてはならないこともまた事実であるわけです。

自己承認できないでいると、「泣き面に蜂」の状況に立ち至るのは必定で、これほど割りに合わないこともありません。職場とか学校でいじめられる人は例外なく、

いじめられる→自己承認できない→いじめられる→自己承認できない→・・・

という悪循環にはまっているものです。

クライアントさんがもしこの悪循環にはまっているなら、コーチは自己承認を回復してもらうべく全力を尽くさなくてはなりません。それがコーチングの意義であるわけですから。

自己承認は人間の幸福の基礎であり、何をさておいても確保しなければならないものです。しかし、学校では自己承認を確保しなさい、とは教えません。せいぜい他人には親切に、と教えるに過ぎません。しかし、他人の親切は自己承認ができている人が自然と引き寄せるものなのです。

感性の違いを乗り越えるためには
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フォーマル・ディスカッションという討論形式があります。大学でESSをやってた人はよくご存知のことと思います。

フリー・ディスカッションは談論風発、全員が平等に発言します。一方、フォーマル・ディスカッションにおいては指名されたひとりが、冒頭に自分の意見のプレゼンテーションを行い、他のメンバー全員でこの人の意見を吟味(examine)する、という形をとります。意見陳述をした人(オピニオン・メーカー)に対して、メンバーがいろいろな角度から質問を出し、オピニオン・メーカーが都度その質問に答えるという、1:nの形になるわけです。

また通常は司会者(chairman)がいて、メンバーは挙手をして司会者に指名してもらい、発言します。

もちろん吟味するだけでなく、吟味している内容に関して、ポイント・オピニオンを出したりしますが、あくまで指名された人の意見を吟味するというスタイルを終わりまで貫くのです。

フォーマル・ディスカッションの特徴は冒頭の意見陳述の後に結構厳密に用語の定義を行なうことで、メンバーとオピニオン・メーカーの誤解が生じないという利点があります。

さて、このフォーマル・ディスカッションのスタイルですが、コーチングに大いに応用できると思います。コーチングとは結局、クライアントの意見を吟味(examine)することです。もちろん、クライアントは事前に意見を立てているわけではなく、その場で考えるのですが、それをもって「引き出す」というわけです。

コーチングにとって特に応用できると思える点は、用語の定義きっちりを行なうことです。だいたいダメなコーチングほどコーチする側の用語の把握があいまいなものです。

たとえばよくあるケースは、

「部屋がなかなか片付かないのです」
「部屋が片付けられるようになるにはどうすればいいですか」

といったやりとりですが、片付けるという言葉の定義がなされずに、いきなり片付けるためには、と飛躍しています。これはまずいコーチングの見本みたいなものです。正しくは、

「片付いている、というのはあなたの場合どういう状態を言うのですか」

その後で、

「現状はどんな状態ですか」

これは10点満点で採点してもらうとよくわかります。最後に、

「ではあなたは現状をどうしたいのですか」

と尋ねることになります。ことによると、相手は、

「満点と行かずともまずは6点くらいにならないか」

と思っているかもしれないし、あるいは本音は、

「現状6点だからこのままでもまあいいや」

と思っている可能性もあります。そんな相手に対して、十把ひとからげに「部屋が片付けられるようになるにはどうすればいいですか」とは適切な質問ではないでしょう。

定義からひとつずつ積み上げていけば、大体どんな相手でも大過なくコーチングでき、コーチ・クライアント間の相性は問題になりません。

「コーチングは相性が大切」と力説する人がいます。実は昔の私がそうでした。しかし相性がコーチングの障害になるというのは、コーチ・クラインアント間に感性の違いがあると見るべきで、定義をあいまいにしているために、感性の違いが乗り越えられないだけのことであると考えます。

最近の私は相性はほとんど気になりません。

うぬぼれ、傲慢大いに結構
531



仮にA・Bの両者がいて、同じ能力と技量を持っていたとします。ただし、Aのセルフ・イメージは、

・自分は誠実だ
・自分はできる
・自分は天才だ

であるとします。これに対してBのセルフ・イメージは、

・自分は不誠実だ
・自分はダメだ
・自分はバカだ

であると仮定しましょう。おそらくAは溌剌たるオーラを発しているのに対し、Bは周囲に暗い雰囲気を漂わせているに違いありません。そして両者はその雰囲気の通りの精神世界に住んでいて、雰囲気通りの人生を歩むことになります。

ところで、実はAとBは同一人物で、Aは自分のなかのプラスの自分、Bは自分のなかのマイナスの自分と考えることにしましょう。セルフ・イメージをプラスに合わせるか、マイナスに合わせるかで全く異なる人生を歩む、というのはこう考えると理解しやすいと思いますが、いかがでしょうか。

しかし、人間ときにはBに振れることもあります。その場合、私自身はBのセルフ・イメージを追い出すために全力を尽くすことにしています。そのためには多少無理をしてでも、Aのごとく振舞うしかありません。謙譲の美徳は必要ですが、しゃべる言葉や書く文章に自信の火花が飛び散るくらいでちょうどいいのです。

私は人知れず、

「自分は天才だ」

と呟くことにしています。私が天才であるとはおこがましいかぎりです。しかし、たいした才能でないにしても、才能がないわけでもないのだし、誰に迷惑をかけるわけでもないのだから、ま、いいかと思っています。そうやって自分を奮い立たせるわけです。

「自分はバカだ」

というのも一面当たっていますが、これを日々呟いていれば、おそらく生きているのがイヤになることでしょう。セルフ・イメージを強化するためにはうぬぼれ、傲慢大いに結構、と思うのですが、いかがでしょうか。

ひとつはっきりしているのは、自分で自分のセルフ・イメージの面倒が見れない人は、他人のセルフ・イメージの面倒を見る余裕がないはずなので、コーチングをする側にはなれない、ということです。
550 日経経営セミナー
549 『黄金律』
548 目標を仕切りなおす
547 想いが出て来ないならアンコーチャブル
546 時間にルーズな人

*
545 管理職の誤解
544 優劣でなく個性で勝負しよう
543 スパム・メール
542 ないないづくし
541 礼節=承認

*
540 コーチングってどうすることですか
539 農民気質と狩猟民気質
538 恐ろしげな声付き
537 コーチングでなくて何がイカンのか
536 オジサンの社会経験

*
535 片付けられないのは
534 クロージング
533 親切は自己承認が引き寄せる
532 感性の違いを乗り越えるためには
531 うぬぼれ、傲慢大いに結構
*
530 断定形で発言するのはやめよう
529 対話として自然であるかどうか
528 ページランク5
527 結局申し込まない人は申し込まない
526 提案したらダメなのか

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524 自己承認ができていない人は
523 ちょっとした感動
522 自分の生き方を肯定すること
521 メモ魔vsメモ極少派

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520 コーチング力は国語力
519 昔の経営者
518 早朝勉強会
517 質問の技術は定義から
516 新快速の威力

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513 学校マネジメント
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503 農民と狩猟民
502 コーチングの社会通念
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