指示・命令・外的コントロールの時代の終焉
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昔は組織のマネジメントも、上司がすべて把握して指示・命令し、あとは外的コントロールで締め上げて綱紀を維持していれば通用しました。

今は世の中が複雑になりすぎて、上司がすべてを把握することなど全く不可能です。部下に自律的・自発的に動いてもらい、市場の情報を刻々経営にフィードバックしていく必要があります。そうでないと市場で生き残っていくことはできません。こうした状況はコーチング的な双方向のコミュニケーションが不可欠なのです。

指示・命令・外的コントロールのマネジメントは現在大半がコーチング的なマネジメントに移行しました。しかし、指示・命令・外的コントロールの伝統的手法は根強く、依然として多くの職場で根強く残滓が残っているのが現状です。

その歴史的背景を見てみましょう。

人類にとって、指示・命令・外的コントロールは有史からの伝統的なやり方です。ようやく20世紀後半にこのやり方では立ち行かなくなったのです。選択理論とは外的コントロールという有史以来の方法を学問的に否定する考え方、と言っていいでしょう。

なぜ指示・命令・外的コントロールでは立ち行かなくなったのか。その第一の理由は科学技術の発達によって、物質的に豊かな社会が実現したことです。

有史以来、一握りの支配層を除いて、つねに一般大衆は貧しかったわけです。つまりモノの需要はつねに供給を上回っていました。ごく近代まで、人類の大半は生きていくことに精一杯でした。

ところが科学技術の発達によって、先進国ではモノの供給は必ず需要を上回るようになってしまいました。その結果、豊かな社会が実現しました。昨今の携帯電話などが顕著な例ですが、ロボットを使った自動生産のお陰で、今日では必ず供給能力が需要を上回ってしまうのです。

科学技術の発達は核兵器を生み出し、東西冷戦という状況を一時的に生み出しはしました。しかし、西側が勝利した後は、米国の軍事的抑止力のお陰で地域紛争はあっても、世界大戦はもはや起こり得ない、平和な時代が到来しました。

つまり、昔は戦争のインフレの時代、現代は平和なデフレの時代、ということができます。

インフレの時代は、基本的にモノ不足なので、何でもつくりさえすれば基本的には売れました。ひと言で言えば、インフレの時代は「つくれば売れる」生産主導の時代であったわけです。

これに対しデフレの現代は全く状況が異なります。モノ余りの時代は質の劣る商品は見向きもされません。いい商品、売れる商品をつくる必要があります。もちろん必死に売る工夫もしなければなりません。こうしたことに失敗すれば淘汰され、敗者として市場から退場しなければならないのです。ひと言で言えば、デフレの現代は「衆知を結集しなければモノは売れない」営業主導の時代と言えるのです。

昔は企業活動も、過去の成功体験の踏襲で良かったと言えます。基本的にモノ不足でしたし、世の中の進歩もゆっくりしていました。ですから昔のマネジメントは指示・命令・外的コントロールでこと足りたのです。組織は現在と比べてのんびりしており、効率も低かったため、メンバーの精神的ストレスに対しても無頓着でした。

しかし、現代は過去の成功体験の墨守など論外です。世の中の進歩も極めて早く、とくにインターネット、携帯電話、カーナビが出てきてからは、数年前の常識ですら通用しない状況になってきています。「過去の成功体験は失敗の元」と言い切って良いぐらいです。

なによりも外的コントロールを使う組織はメンバーの衆知を集めることができません。それに組織で外的コントロールを使っていては、そのストレスの克服にメンバーが多大な精神的エネルギーを浪費してしまい、効率は大幅に低下します。メンバーの衆知を結集できない、効率の低い組織はやがて淘汰され、姿を消していくのは時間の問題です。

外的コントロールを使わない、というのは現代社会で組織が生き残っていくために経営効率上要求されることなのです。昔の社会の組織は「粗雑」でしたが、現代社会の組織はより「精緻」なものに変わっています。

現代の組織は相対的にクリエイティブで、メンバーの精神的ストレスは小さく、効率は格段に高くなっています。昔の外的コントロールを使ったマネジメントよりは現代の外的コントロールを使わないマネジメントのほうが明らかに進化しているのです。

以上を対比して書くと次のようになります。


マネジメント 指示・命令・外的コントロール 質問による引出し
                      (コーチング)
--------------------------------------------------------------------
時代     需要>供給          需要<供給
基調     インフレ           デフレ
時代の特徴  つくれば売れた時代      周知を集めなくては勝てない時代
主導     製造主導           営業主導
成功体験   成功体験の踏襲でOK     過去の成功体験は失敗の元
部下     指示どおり動く        自発的に動く
ストレス   大(軍隊的)         小(クリエイティブ)
効率     低い             高い


最大限の衆知を集めるには、外的コントロールを排し、ストレスをなくして意思疎通を良くして、個々のメンバーは自律的・自発的に動くことによってはじめて可能になります。

外的コントロールというのは「衆知を集める」ということに関しては、決定的に問題があり、「粗雑」な方法であると言わざるをえません。現代社会では衆知を集めた方が勝者となるのです。だから外的コントロールは敗者の手法です。

一方、個人の幸福という観点から見ても、組織内の外的コントロールの人間関係は不幸の源泉以外の何者でもありません。

つまり、組織にとっても、個人にとっても、指示・命令・外的コントロールのマネジメントは何一ついいところはなく、時代遅れなのです。過去においても決して優れたやり方ではなかったのですが、昔は指示・命令・外的コントロールといったやり方でも、それなりに通用したということなのです。

とは言え、前述したように、指示・命令・外的コントロールの伝統的手法は根強く、依然として多くの職場で根強く残滓が残っているのが現状です。

私は講演のたびごとに、

「あなたの職場に外的コントロールはありますか」

と尋ねて挙手をしてもらいますが、大体8割が挙手します。人類が有史以来慣れ親しんだ外的コントロールは未だ根強く、払拭されるにはまだまだ時間がかかるのです。その意味で現在は明らかに過渡期と言っていいと思います。

ただ、徐々に良くはなっています。おしんの時代と比べれば、現代社会の外的コントロールはあそこまで酷くはない。これは明らかに人類の進歩です。人類は物質的に豊かになることによって少しは精神的にも向上しているのです。

一体何が悪いのか
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某コーチング講座を修了した人が連絡を取って来られました。寡聞にして私が知らないコースでした。コーチングやコーチングのセミナーの仕事をしたいのだが、どうしたらいいか途方に暮れている、とのことです。

有料でクライアントは何人取られましたか、と訊いたところ、ただのひとりも取ったことがない、との答えが返って来ました。さらに訊いてみると・・・プロのコーチからコーチングを受けたこともなし。ホームページなし、ブログなし、もちろん名刺なし、ないないづくしです。こちらが絶句したのは言うまでもありません。

この人も良くないが、某コーチング講座も問題ありです。コーチングを教えるというのなら、コーチングで身を立てるイロハぐらいは教えるべきです。

どうもこの人はお客さん扱いされて、食い物にされたのでしょう。

業界の事情を私なりに説明して差し上げましたが、この人はだんだん無言になっていって、ついには黙ってしまいました。それでセッションは終了。

こんな相手をしている私もヒマ人ですが、一体何が悪いのか。結局、コーチングは会話術だよ、会話術を身に付ければコーチになれるんだよ、と問題を擦り変えている業界体質と、それを鵜呑みにした本人の両方がイカンのだ、ということでしょう。

学校マネジメント
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学校マネジメントという学校・教師むけの雑誌があります。明治図書というところから出ています。ここから原稿を依頼されて、過日送っておいたのですが、2006年10月号で掲載されました。

「困った保護者への対応=さすが!といわれる方法に学ぶ
コーチングの手法をどう取り入れるか」

というものです。スキャナで取ってみました。コレです。

恋愛のトラブル
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恋愛のトラブルでコーチングは可能か、とたまに訊かれることがあります。

今なら「成り行きにまかせるのが一番ですね」とお答えします。かくいう私も以前はこうしたテーマでコーチングをお引き受けしたことがあるのです。

コーチングが必要と思うにいたったというのは、まず恋愛関係が少なからず暗礁に乗り上げている、ということを意味します。だいたい「結婚したいのだが、相手が結婚に同意しない」というケースが大半であろうと思います。

つまり、相手はつかず離れずなのですが、本人は諦めきれない、という状況です。世間にはこうした困難を乗り越えて結婚したケースもあるようですが、おそらくうまく行かないでしょう。うまく行くとすればごくまれであると思います。

結局、結婚に同意しない相手は追いかけてはいかん、ということになります。

恋愛関係が少なからず暗礁に乗り上げているのなら、最善の策は別れることです。しかし、そう言われても渦中の本人は諦め切れないに違いありません。

次善の策は、焼けぼっくいに火がつくことを期待して、相手と距離を置くことでしょう。たいてい、うまく行かないので、結局は別れることになると思います。だから、成り行きにまかせるしかないわけです。時が解決し、時が癒してくれる問題であると思います。

恋愛は相思相愛でなければ、追えば相手は逃げます。ドライな書き方をするようですが、私も身をもってこれは経験してきています。相手を振り向かせるためにコーチングして欲しい、というのは論外です。そんなことをしてもどうなるものでもない、と知るべきです。

恋愛関係が少なからず暗礁に乗り上げているから、コーチングして欲しいと言われて、これを受けた場合、実際問題としては結局、再出発するための心の整理を専ら支援することになってしまいます。つまり傷心を癒すためのカウンセリングを行なうことになるわけです。

恋愛のトラブルはコーチングに乗らない、と私は思います。

日経社告
511



杉本良明先生

お世話になります。早速ですが、10月18日(水)の日経経営セミナー「部下のやる気を引き出すコーチング」につきまして、来週13日に日経朝刊に社告を掲載させて頂きますので、何卒ご了承下さい・・・


上記のメールを日経新聞社の担当の方からいただきました。それで「社告」なるものを今朝の日経で探してみましたが、1回目は見当たらず^^;

2回目でようやく小さなベタ記事を発見しました。記念にスキャナで取ってみました^^
550 日経経営セミナー
549 『黄金律』
548 目標を仕切りなおす
547 想いが出て来ないならアンコーチャブル
546 時間にルーズな人

*
545 管理職の誤解
544 優劣でなく個性で勝負しよう
543 スパム・メール
542 ないないづくし
541 礼節=承認

*
540 コーチングってどうすることですか
539 農民気質と狩猟民気質
538 恐ろしげな声付き
537 コーチングでなくて何がイカンのか
536 オジサンの社会経験

*
535 片付けられないのは
534 クロージング
533 親切は自己承認が引き寄せる
532 感性の違いを乗り越えるためには
531 うぬぼれ、傲慢大いに結構

*
530 断定形で発言するのはやめよう
529 対話として自然であるかどうか
528 ページランク5
527 結局申し込まない人は申し込まない
526 提案したらダメなのか

*
525 自己承認と成功哲学
524 自己承認ができていない人は
523 ちょっとした感動
522 自分の生き方を肯定すること
521 メモ魔vsメモ極少派

*
520 コーチング力は国語力
519 昔の経営者
518 早朝勉強会
517 質問の技術は定義から
516 新快速の威力

*
515 指示・命令・外的コントロールの時代の終焉
514 一体何が悪いのか
513 学校マネジメント
512 恋愛のトラブル
511 日経社告
*
510 雑誌で紹介
509 NLP入門セミナー
508 靖国神社に行ってきました
507 プラスの自己
506 開き直りは自己承認

*
505 幼い相手のコーチング
504 外的コントロールの生んだ悲劇
503 農民と狩猟民
502 コーチングの社会通念
501 満足のズレ


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001〜050 051〜100 101〜150 151〜200 201〜250
251〜300 301〜350 351〜400 401〜450 451〜500
501〜550 551〜600 601〜650 651〜700 701〜750
751〜800 801〜850 851〜900 901〜950 951〜999
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