質問の呼び水
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ほぼ1年ぶりに本業の取引先の接待でホテルで飲食しました。

相手は工場設備の業者さんでした。今回は業者選定にあたって私がこの会社を強く推薦したので、そのお礼の意味があったわけです。

さて、こちらが接待を受ける側ですが、私の方が日ごろコーチとして活動しているため、自然と聞き役になってしまいます。業者さんはひとしきり自分のことを話した後、

「あのう、私ばかり話していますがよろしいんでしょうか」

と言ってきました。私の気持ちとしては、接待のお礼に言葉の上では相手を接待して差し上げたいという気持ちが強かったので、適当に自分の話も混ぜながら聞き役で通しました。

誰でも相手から質問ばかりされると、「尋問されている」感じを持ってしまい、不安になるものです。だから相手に多く話してもらおうと思えば、たたみかけるように質問するだけではだめで、質問する側がある程度、自分のことも話す必要があります。こちらの情報を簡潔に伝えることで、相手はずいぶんと和むものです。自分のことを話すことが質問の呼び水になる、というわけです。

パーソナル・コーチングでもこの傾向はあてはまります。コーチ側も質問するばかりではなく、ある程度のステートメントを簡潔に割り込ませる、これも相手から話を引き出す技術のうちでしょう。

人当たりの丸さ
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私は昔ある面接で、一応しぶしぶ採用されたことがあります。

しかし、後日面接した方からこう言われのです。

「君は自分のことばかり話していたな。あんな時は何をお聞きになりたいですか、何を話したらいいですか、こんな内容でよろしいですか、と相手の意向を聞くもんだ」

以上のコメントには案外コミュニケーションの本質が含まれています。自分をPRしなければならない面接でさえ、肩の力を抜いて、聞くという姿勢で相手を主体にしたほうがうまくいく、ということです。

私は若い頃、情熱とかポリシーとか意欲とかは人一倍強かったが、結局人当たりはトゥー・アグレッシブであったわけです。これでは女性と付き合ってもうまくいきません。ずいぶんと女性に逃げられました。そして、当時は理由がわからずたいへん苦しんだわけですが、そのなかで、トゥー・アグレッシブな面が徐々に矯正され、丸くなっていったわけです。

人間内面まで丸くなる必要はありませんが、人当たりは丸くなる必要があるのです。人当たりの丸いか尖っているかの違いは何か、それはずばり相手を主体にして「聞くこと」ができるかできないか、にかかっています。

といって相手が空っぽで、聞いても何も出てこないかも知れません。その時は、

「今日は何を話したいですか?」

と聞くことです。それでも出てこなかったら、自分の話をすればいいのです。

今はコーチングをプロとしてやらせていただいてます。相手を主体にして「聞くこと」なしに仕事は成り立ちません。クライアントさんによると、お陰さまで人当たりは丸いそうです。しかし、以前アグレッシブだったころの名残はあって、私自身は口数は多いほうだと思っています。

「気持ちはわかる」「無理もない」
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相手の意見に賛成であろうが、反対であろうが、確実にできる承認というのがあります。それは、

「お気持ちはわかります」

です。

「お気持ちはわかります。ですから・・・」
「お気持ちはわかります。ですが・・・」

のどちらもスムーズに会話が続いていきますね。ではここで、

「私の気持ちが簡単にわかってたまるもんですか!」

とすねられたとしましょう。どう言えばいいでしょうか。正解は、

「そう言われるのも無理はない」

と、またここで承認してしまうことです。とにかく承認を続けていくと、いずれ相手はこちらを味方だと思って心を開いてくれます。意欲を引き出そうと思えば、承認を続ける以外ないのです。

とは言え、苦言を呈したいことはあります。こんな時はズバリ言っても、質問形で終わるのがコツです。

「そんなことではハナシにならん、と私は思いますが、あなたはどう考えるのですか」

といった感じです。

相当に激論になっても、「気持ちはわかる」「無理もない」を繰り返す限り、相手が切れてしまうことはないでしょう。

自分のブランドを築く
657



稲盛和夫氏の『生き方』という本がベストセラーになっています。私は家内が買ってきたので読みました。世の人は絶賛しますし、私もケチをつける気はないのですが、20世紀後半の工業化社会の価値観を色濃く感じます。

各人が職場でこなしている仕事と、自分の人生のベクトルが同じというのはごく限られた少数の人で、大多数はそうではありません。会社の仕事だけ全身全霊を傾けたらそれでいいのか、という点で私はあまり新しい答が書かれていないと感じました。

人間いくら一生懸命仕事をしても、定年で一線を退けば後は思い出しか残りません。その時点で単に手習いをしたり、自分史を書いたりするのは、私個人としては納得できる人生とは言い難いのです。

納得のできる人生とは、生涯かけて小なりと言えども自分のブランドを築くことでしょう。もちろん稲盛氏は「京セラ」という自分の大ブランドを築いた成功者です。しかし、必ずしも事業を起こすことでもありません。あることの研究家として一家を成し、著書を残すのも自分のブランドのうちだと思います。

21世紀に入って、だれでも全員が情報発信できる時代になり、うまくやれば自分のブランドを築くことも夢ではありません。私は日ごろのコーチング・セッションで、折にふれて自分のブランドを築くということをクライアントさんに提案しています。自分のブランドを築くことに興味のない人はいません。

21世紀のキーワードは「情報発信」と「自分のブランド」です。現代はこの視点から生き方を提言する時代だと思っています。これが抜け落ちているなら、その提言はいささか古いと思います。

自己承認を磨く
656



私のサイト経由で、よくコーチ志望者が連絡を取って来られます。

「どうしたらプロとしてやっていけるのか」

という質問をわりと頻繁に受けるわけです。私がこの問いに答えるのは僭越なハナシですが、一応先輩として以下のように答えることにしています。

「コーチングは自発的行動を促すコミュニケーションの技術です」という、文言がそこかしこのサイトに散見されます。確かに技術という一面もあります。しかし技術よりもっと大切なことがあります。

自発的行動を促すためには相手を承認する必要があります。相手を批判したり、脅かしたりして行動を促すのでは、自発的行動とは言えません。相手を承認してこそ、相手は自発的な意欲を持ちうるわけです。

ここで注意すべきは、自分で自分を承認できることが、相手を承認できる条件であるということです。自分で自分を承認できない限り、相手の承認は口先だけのものになります。コーチングとはその多くの部分が自己承認を相手に分かち与えるプロセスということができるのです。

自己承認ができるほど、つまり人間力が高いほど、提供できるコーチングの質は高く、効果的にクライアントを支援できるわけです。

頭が良くて弁舌さわやかなら、コーチングの適性は通常結構あります。しかしこれだけでは十分ではありません。頭が良くて弁舌さわやかでも、自分を十分に肯定できない人、いわゆる自己承認に欠ける人はいます。こういう人はクライアントに安心感を与えることができません。

つまり技術だけではダメで、いかにコーチングする側が自己承認できているかが大切なのです。自己承認するためには、自分が自己承認できる人生を歩んでいる必要があるというわけです。

コーチングはいろいろな側面がありますが、一番大切なのは承認という生き方(WAY OF LIFE)だと個人的には考えます。承認という生き方は、まず自分自身を承認すること、次にお互いが承認し合いながら、各人が自分の目標を実現しつつ、自分も周囲も円満に幸福になっていく、というライフ・スタイルであるわけです。

コーチング業を志すのであれば、この技術以外の側面に気付き、技術を磨くとともに自己承認も磨いていただきたいと思います。


って、書いてみるとカッコよすぎるセリフですね^^
700 人前で話すコツ
699 あまり目標達成のみにこだわるのも善し悪しだ
698 ビジネス・コーチングはカスタマイズ
697 自分の精神の防御が第一
696 女性の誘い方

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695 サラリーマンは流されて生きるしかない?
694 頭から否定しない
693 危うく難を逃れた
692 コーチングに合わない人
691 マッサージ1回分

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690 もう謝るな!
689 コーチング研修
688 問題意識が感じられないとき
687 とっとと答を渡す
686 高知市に出張

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685 コーチング臭いコーチング
684 体調いかんにかかわらず
683 デジタル・デバイド
682 ファンレター
681 病との付き合い方

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680 保健師向けコーチング・セミナー
679 片道6時間、日帰り出張の限界
678 オッサン笑い
677 カルマを背負ってお気の毒、と考えよう
676 「青臭さ」が必要

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675 コントローラー
674 大言壮語
673 実情は仕切り直し、出直し
672 Wikipediaのコーチングの解説
671 一緒に考えましょう

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670 軽く、明るく、前向きに
669 それをコーチングで引き出してもらえると思ってました
668 執事という考え方
667 おせっかい
666 そんなに忙しくないコーチ業

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665 おかしいぞコーチング学習者
664 事業を従業員に解説する
663 睡眠不足
662 何かを取ったら何を捨てなくてはならない
661 コーチング1回15分

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660 質問の呼び水
659 人当たりの丸さ
658 「気持ちはわかる」「無理もない」
657 自分のブランドを築く
656 自己承認を磨く
*
655 過去を封印する
654 自分の人生何だったのか、という視点
653 コーチングに価値を見出さない世代
652 皿を食ったらウサギになる
651 指導口調


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