口先だけの承認では絶対部下を欺けない
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減点評価で部下に接すれば、

「お前ダメだな」とか「この役立たずが」

という侮蔑のメッセージを体から発散させ続けることになります。そんな状態では、心からの承認の言葉など、出るわけがありません。たとえ、口先だけで承認の言葉を吐いたとしても、部下には容易に見抜かれてしまいます。

「あの人のためには仕事はしたくない」
「こんな仕事に何の意味があるんだろうか」

と、仕事に対する興味や意欲をなくしてしまいます。その結果、業績は停滞し、離職者も出るわけです。ですからその上司が減点評価を続ける限り、職場の求心力は下がる一方なのです。

では、これをゼロベース評価に変えるとどうなるのでしょうか。

いかに部下を育てていくか、というのはどこの職場でも直面している課題です。そのためには、部下に過度の期待をかけないこと、「彼にはいろいろ難点がある」という理解と諦め、これが必要不可欠です。そしてこれがゼロベース評価なのです。とにかく短所については潔く諦めて、変な期待感を捨てる必要があるのです。

変な期待感を捨てれば、大した成果でなくても、心からの承認が可能になります。少なくとも変な侮蔑は全くない。具体的には、褒めて讃えて持ち上げる、といった忍耐や愛情が比較的たやすく表現できるようになるのです。その結果、

「この仕事はあの上司のためにも頑張りたい」

部下が思うようになるのです。つまり、

減点評価 = 絶えざる侮蔑 = 意欲低下

ゼロベース評価 = 心からの承認 = 意欲向上

であるわけです。口先だけの承認では絶対部下を欺けないのです。

ところで、中小零細企業ではどちらかといえば落ちこぼれた「はぐれ雲の」ような社員が集まりがちです。ですから、経営者・幹部とも従業員が持つ「いろいろな難点」に関して、もとより理解があります。

ところが、優秀な人材を集めた一流企業や官庁では、部下は「優秀で当たり前」です。その結果、減点主義が当たり前のように横行している、という傾向が見受けられるのです。

ゼロ・ベース評価は上司・目上にも有効
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ゼロ・ベース評価は上司・目上にも有効です。

私は同族企業に在籍し、父親は社長という上司でもあります。私は以前は、

「そんな言い方はないでしょう!」

とよく食ってかかったものです。つまり「上司はかくあるべし」という期待感が強かったわけです。こんな期待感があるうちは人間関係、絶対うまくいきません。一時は口論に疲れ果てて、面従腹背の態度を取っていたこともあります。しかし、不満は必ず顔に出ます。結果、相手にすぐにわかってしまいます。

コーチングを学び始めるのと前後して、「他人は変えられない」という前提を学ぶわけですが、そのおり、このゼロベース評価を父親にも当てはめることにしました。つまり、期待感を捨てるようにしたわけです。

70を越えた老人に文句を言っても、変わるわけがないですし、「あなたの性格、ここを直したほうがいいよ」と忠告されたところで、おいそれと直せるわけがない。だったら、こちらが合わせるしかありません。そのほうが問題がずっと早く解決するし、相手に合わせていく分、人間としての幅が広がるというものです。その結果、

「気持ちはわかりますが、それはこうしたほうがいいですよ」

といった承認を織り交ぜた説得ができるようになりました。つまり、昔は意見が違ったら、気に障るようなことを言われたら、憤然としていたわけです。しかし、今は「それで当たり前」と割り切っている結果、相手の気持ちも承認でき、冷静に意見を調整できるようになった、ということです。つまり、

ゼロベース評価=期待感がなくなる=腹が立たない=相手の気持ちが承認できる

ということです。今にして思えば、「相手が変わるべきだ」とムキになっていた以前の私は、まだまだ未熟者であったなぁ、と恥じ入らざるを得ないのです。

身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ
783



相手は基本的には変えられない。ましてや批判した日には梃子でも変わらない。屈服したのなら、いやいや従ったまでのことで、そのツケは早晩清算しなければなりません。かならず、相手から陰で批判されるのはまず間違いがないでしょう。

もし日ごろ相手を批判して変えようとしてきたなら、その人は例外なく減点主義に毒されていると言って間違いありません。この人が減点評価を続ける限り、相手は絶対に変わらないでしょう。それどころか人間関係はいよいよこじれていくのは間違いありません。

相手は承認によってのみ変わる可能性があるのです。相手を変えうるような承認は、ゼロベース評価ができない限り、できっこない。減点主義の人は、自分のやりかたをゼロベース評価の加点主義に変えるしか、人間関係の行き詰まりを打開できないわけです。すなわち、相手を動かし、状況を打開するためには、自分がまず変わらなければならないのです。つまり、

自分中心 = 減点主義 = 批判 = 人間関係の行き詰まり

他人中心 = 加点主義 = 承認 = 人間関係の打開


という図式が成り立ちます。批判から承認への転換、減点主義から加点主義への転換は、取りも直さず自分中心の考え方から他人中心の考え方への転換を意味し、人間関係の行き詰まりを打開する力を秘めているのです。「身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ」という感じでしょうか。

コミュニケーションは言葉だけにあらず
782



同じ車を運転するにしても、舗装されたハイウェイと、舗装されていないあぜ道では走りやすさに雲泥の差があります。同様に、同じことをしゃっべても、それがどの程度相手の心を動かすかは、相手と築けている人間関係、しゃべる人の人生観、生活態度といった言葉以外のインフラで全く異なります。

会話術の本を読めば、それこそ「術」としてのしゃべり方はいくらでも書かれています。しかし、それは車の性能を論じているに過ぎません。負けず劣らず大切なのが、道路の状態です。道路を論ぜずして、車の性能だけを云々しても、片手落ちです。会話術の本は道路を捨象(切り捨てること)して、車の性能だけを扱っているわけです。

コミュニケーションはむしろ言葉(車)より言葉以外のインフラ(道路)を研究すべきだ

これは私が日頃痛感していることです。しかし、道路を扱えば、あまりにも多岐に渡るため、収拾つかなくなります。車ばかり云々する現状はある程度やむを得ないのも事実です。

あるクライアントさんがこんなことを言われました:

「自分が他人と話しているのをボイス・レコーダーで録音してみたが、聴き取りにくく、存在感がなく、がっかりした」

その方は確かに声に感情が出にくい感じはあります。しかし人間関係、人生観、生活態度といったインフラは全く問題ない方なのです。こう申し上げておきました:

「確かに声という切り口だけで判断すればそう感じるかもしれませんが、コミュニケーションはむしろ言葉以外のファクターも大きいですよ。その人の持つ雰囲気やオーラといったものは、音声だけの録音では感じ取りにくいので、そんなに心配されることはないと思います。もちろん話し方の工夫をする余地はあるでしょうけどね」

承認はゼロベース評価
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相手が自分を利用しようとしているだけなのか、それとも相手が自分に味方しようとしてくれているのか、これは相手の言葉の端々から誰でもほぼ直感的にわかります。一体何が違うのでしょうか。

相手が単にあなたを利用しようとしているのなら、その相手は必ずあなたを自分の理想からの減点で評価しています。これに対して、相手があなたの味方になろうとしている人なら、ゼロ点からの積み上げで評価しているものです。前者は冷たく、後者は温かいのです。

理想像からの減点で他人と接する人は、滅多なことで他人を肯定的に受け容れられるものではありません。相手が100点満点でない限り、不足ばかり感じるのです。100点満点でも心からの賞賛はありえないでしょう。

しかし、ゼロ点からの積み上げで他人に接することができる人は、5パーセントでも10パーセントでも相手に評価できる点があれば、それを肯定的に考えることができます。ここに説得力や包容力の差ができるわけです。

同じように承認の言葉を吐いても、相手を利用しようとしている人の言葉は相手の自己承認に加勢しません。しかし、相手が自分に味方しようとしてくれている人の言葉は相手の自己承認に加勢するということです。

どちらが人間として正しいか、それは間違いなくゼロ点からの積み上げで他人に接することです。ゼロ点からの積み上げで相手に接した時、頭のいい人はさらに頭を働かせ、よく働く人はさら懸命に働くのです。

これに対して、減点で相手を評価するというのは、自分が特別な存在であると考え、相手を自分の尺度で考える自己中心の考え方です。減点で評価されては、頭のいい人もその能力を腐らせ、よく働く人はその意欲を腐らせるのです。

人見知りという言葉があります。これは取りも直さず減点評価をやっている証拠です。人見知りは子供や若者などに顕著な現象ですが、大の大人にも見受けられます。失礼ながらまだゼロベース評価にたどり着いていないからだと考える次第です。

まとめると、

ゼロベース評価 = 相手主体 = 包容力 = 説得力のある承認

減点評価 = 自己中心 = 包容力の欠如 = 説得力のない承認


他人を説得するためには、その説得の口上も大切ですが、このゼロベース評価というインフラは必要不可欠なのです。誰でもがついて来る包容力というのは、ゼロベース評価が身についていて、相手を肯定的にみることができ、そうした承認の言葉を吐けるかどうかに尽きるのです。
800 米国人と加点主義
799 加点主義こそ家族円満の秘訣
798 何で検索しても
797 雑談して終わり
796 コーチングを信じる

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795 やるべきでないことはやらない
794 ポジティブ・シンキング
793 上司に対するリーダーシップ
792 上京しました
791 おっしゃってることに共感できないですね

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790 聞き方
789 空気の読めない人
788 減点主義と加点主義
787 下手な考え休むに似たり
786 志なくしてコーチングなし

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785 口先だけの承認では絶対部下を欺けない
784 ゼロ・ベース評価は上司・目上にも有効
783 身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ
782 コミュニケーションは言葉だけにあらず
781 承認はゼロベース評価
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780 文頭で批判しても、文末で承認する
779 うだうだと人と関わること
778 NLPに対する私見
777 無為にして化す上司
776 究極の自己承認の言葉

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775 視界狭窄
774 結局コミュニケーションの問題
773 強い心
772 目指すのは9勝1敗
771 格好をつけない

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770 えらいことになってしまった
769 ガチャガチャ感
768 手柄を相手に譲る
767 内なる自分の承認がもらえるならそれでいいじゃないか
766 感謝は承認である

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765 漫才の傾聴
764 連続のドタキャン
763 女性は30〜40代が旬
762 ブログはコーチの条件
761 承認によって元気をもらう場

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760 行動力、ある人ない人
759 日経経営セミナーは無事終了
758 屋号
757 歩なし将棋は負け将棋
756 我流もまたよし

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755 面の考え方
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751 鬱を通告するセッション


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