スキルではなく意欲に働きかけるのがコーチング
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成績の上がらない営業マンは有能な上司のビジネス・コーチングを受けるべきか、社外のコーチのパーソナル・コーチングを受けるべきか、といったら間違いなく前者です。

「一日にあと一件訪問先を増やすにはどうすればいいか」

この問いは社内の上司も社外のコーチでも投げかけることはできます。しかしこの問いに本人が考え込んでしまって、答えが出ない場合、やっぱり指導する必要があります。その場合、社外の部外者なら指導に限度があるからです。

過日体験コーチングである営業マンを相手にしました。その人は、当然その会社の上司が面倒をみるような内容を私に提示して、私のコーチングを受けたら効果ありますか?と尋ねるのです。長いことやってれば、相手の大体の値踏みだけは即座にできます。私の本音は、

「そりゃ、ないに決まっている。これは能力的に厳しそうだ」

でしたが、そんなことを言っては身も蓋もないので、こう答えておきました。

「あなたがないと思われるのだったらないでしょう」

単に能力が低いだけ、というのはパーソナル・コーチングに不向きです。能力はある程度の水準を保っているが、意欲(モチベーション)にムラがある、というパターンがパーソナル・コーチングには向きます。たとえば、実力は十分あるのだが、気分が乗らないと仕事が手につかない、といったようなタイプが向くわけです。

コーチングはビジネス・スキルを直接改善するものではないのです。まずモチベーションに働きかける。そしてモチベーションがあがった時点で、本人が自力でビジネス・スキルを自分で改善するのがコーチングということです。そのためにはクライアントの実力が水準を保っている必要があるのです。

まず相手の現状を肯定しよう
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承認とはほめること、こうした短絡を専門家でも言ったりしてます。しかし、承認するのにほめる必要は特にありません。単に認めたり、肯定すればいいのです。たとえば、

「基本的にそれでいいと思います」

というのは、現状の姿勢を肯定しているわけですが、別段ほめているわけではありません。その次にこう続けます:

「あと○○が□□になればもっといいですね」

誰しも自分の現状に満足していないものですが、一方で現状は他人に肯定してもらいたいものです。何を隠そう、私自身がそうなのです。だから、上記のような言い方が一番理にかなっているわけです。歯の浮くようなほめ言葉はかえって逆効果です。

とにかく相手の現状の一部を肯定してしまえば、その人とは承認が共鳴する関係になります。こちらが承認することによって相手が承認を返してくれ、それがまたこちらが相手を承認する動機となるからです。こうしてお互いで支え合い、励まし合う関係ができるわけです。

相手と承認しあう関係となるにはまず相手の現状を肯定することでしょう。

受身の練習
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コーチングになんの心得もない一般人を相手にコーチングするのは、格闘技にたとえてみればストリート・ファイト(街の喧嘩)です。ルールなんぞなくて、何でもありなのです。

コーチング学習者同士でコーチングする、というのなら暗黙のルールがありますので、柔道・空手・ボクシングといったルールのある格闘技に例えられるでしょう。

私のクライアントのAさんは現在コーチ21のCTPを受講されていますが、こんな疑問を私にぶつけてこられました。

CTPのクラスのコーチングが実社会で役立つコーチングとはとても思えない

なるほど、無理からぬご感想です。

そう、確かに実際のコーチングとは程遠いです。でも、柔道でも受身の練習をやるでしょう。受身の練習が実際の柔道であるはずがない。でも訓練や練習ということであれば、受身だけを抽出して、ああいった形でやらざるを得ない。CTPのクラスは受身の練習みたいなものだ、と考えられたらどうですか?

と言ったら納得されたようです。

そのクラスでは、クラスコーチが、

「私はつい提案してしまうので、良くないコーチなんです」

と自己批判し、受講者が、

「さすがはクラスコーチ」

と持ち上げるので、辟易したようです。わかる雰囲気ですし、わたしもこのクラスコーチとはお友だちになれそうにありません。しかし、単なる受身の練習と割り切れば、まあ何とかついていけるでしょう。

プロだったら、たとえ受身の練習でも模範演技ができなくてはなりません。つまり、全く提案せずに質問だけでコーチングできる、という基礎がしっかりできたうえで、提案というスキルを随所に織り込む必要があるわけです。

あまり早くから崩した字を書いていると、いつまでたっても字がうまくなりません。だから、書道は最初は楷書で、はらう、はねる、という練習を積みますが、あれも同じ理屈です。

承認の共鳴
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コーチングを始めて4年目。とくに最近痛感するのが、「承認」ということの重要性です。

人間だれでも開運し、その本分を生かさなければなりません。その「開運」に不可欠なのが、他者から肯定してもらうこと、すなわち承認です。肯定してもらうことで、意欲を維持し、貫徹することができるのです。承認がなければ、ひとり寂しい孤独な戦いとなります。

承認してもらうとは、必ずしも賞賛・同意ではありません。相手が批判的で、反対の意見であろうと、気持ちや努力は認めてもらう。これが必要なのです。他者から承認されるときは、必ず他者が「微笑む」という行為に出ます。それが承認の微笑みなのか、侮蔑の嘲笑なのかはだれでもたちどころにわかるものです。

さて、他者から微笑んでもらおうとすれば、まずこちらから微笑む必要があるのです。そのためには自分が明るく上機嫌で、自分から相手を承認する必要があるわけです。しかし、必ずしもほめる必要はありません。

「暑いのにたいへんですね」

「そりゃ、無理もないですね」

「お気持ちはよくわかります」

相手と考え方が異なっても、こうした発言はいくらでもできます。これを微笑みながら言えば、相手も微笑みながら承認を返してくれるものです。

承認は承認を呼ぶ、すなわち承認を「共鳴」させること、それが開運の秘訣です。物理現象の共鳴ではもとのエネルギーが何倍・何十倍に増幅されます。同様に、承認という共鳴は、「意欲」という精神エネルギーを何倍にも増強することができるわけです。だから開運 --- 道が開けるわけなのです。職場でも、承認が共鳴しているような職場は例外なくうまくいっています。

『何ほど道を守り候とも、心陰気に相成り候はば出世相成り難く申し候、何卒春の気に相成り候て御執業なさるべく候。』

これは黒住教教祖の黒住宗忠の言葉です。

「まじめに取り組んでも、心が陰気ならうまくいかない。春の陽気になりなさい」

と言っています。人間明るくないと開運しないのは、承認の共鳴が得られないからです。明るく上機嫌なのが人としてあるべき姿であり、開運の条件なのだと私は信じています。

記憶力の減退
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50近くになって明らかに記憶力は減退してきています。

たとえばつい2月ほど前に行った会社の名前、担当者の名前が出てこない。

「○○の近くの会社」

というような言い方をして、

「A社ですね」「そうそう」

という感じになります。

昨日もセッションの最中に、

「杉本さん、それ前回もおっしゃってましたよ」

と言われて、

「そうでしたか。すみません」

(しまった、そりゃ、ありうるだろな)

とお詫びする結果になりました。以前は年配者が同じ話をするのを聞くと、

「あ、また言ってる」

と思ったものですが、今となっては人のことをあげつらう余裕はありません。

過日、ある音楽マニアのお宅を訪問したおり、

ミサ・クレオール(ミサ・クリオージャ)

という珍しいレコードを聴かせてくださいました。クレオールというのは中米の白人の子孫のことで、スペイン語で歌われるのです。神のことを「セニョール」と歌っていました。

さて、帰ってきたらその「クレオール」という言葉が思い出せない。若い頃は一発で頭に叩きこめたものでした。で、どうしたかというと、「中米・白人・混血・子ども」でグーグルを検索し、ようやく何ページ目かで、「クレオール」を見つけました。

それでも、その後でクレオールがまた出てこない。暫くすると思い出しましたが、思い切ってブログ記事にしてしまえば記憶に定着するだろう、と思って今これを書いているのです。ただこうなってしまっては、意味のないことをただ覚える、などというのは絶対にできないに違いありません。

中米・白人・混血・子ども、そして聴かせていただいた印象的な音楽、そうしたイメージの総体にやっとこさ「クレオール」というラベルを貼れているわけです。ま、人間それでなくても忘れるものですから、年を取るほど覚える努力を繰り返して然るべきです。
850 スキルではなく意欲に働きかけるのがコーチング
849 まず相手の現状を肯定しよう
848 受身の練習
847 承認の共鳴
846 記憶力の減退
*
845 子供が泣いて連絡が取れない?
844 方便をでっちあげる
843 聴衆1000名
842 心臓を鍛える
841 とりあえず承認しておこう

*
840 コーチングも選択肢のひとつ
839 役回り
838 加点主義・原点主義が人生の分かれ道
837 関係改善のやり方はある
836 意欲があるかないか

*
835 ライフワークはわからなければぜいたく品
834 まず、変な人に辞めてもらう
833 説得がうまい人
832 国会討論というけれど
831 絶対相手を承認してはいけないコミュニケーション

*
830 真我の発動
829 不親切なようでも
828 批判せずに相談しよう
827 単純化
826 存在感の出し方

*
825 チャレンジを続けるところに自己承認はある
824 指摘と批判は紙一重
823 加点主義とあげまん
822 自分をゆるす
821 他人をゆるす

*
820 承認は元気の源泉
819 少子化社会は意識的なコミュニケーションが不可欠
818 コミュニケーションでケアしなければならない時代
817 いかにオープン・クェスチョンに慣れてもらうか
816 バランス・シート経営

*
815 氷室の日(7月1日)
814 日常の繰り返しを破る
813 凪
812 「いざとなったら」、このポイントを押さえよう
811 苦手な歯科

*
810 心の法則の誤解
809 夢は他言しない
808 まともな人だけ相手にする
807 逆境に勝る師なし
806 癒しの傾聴はやらない

*
805 武豊町
804 自己実現の陥穽
803 承認は自我を育てる
802 人間相手は加点主義しかありえない
801 外的コントロールは減点主義だから古い


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751〜800 801〜850 851〜900 901〜950 951〜999
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