なめられないために
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そんなことでは「なめられる」

は、経営者・マネージャーがコーチング的なものに取り組む時の最大の心理バリアではないかと思います。世の中には「なめられる」ことを危惧するあまり、居丈高な物言いをする人がずいぶん多いのではないでしょうか。

では「なめる」というのはどういうことでしょうか。たとえば中国は日本外交を「なめて」いるわけですが、結局相違点は相手側が折れてくる、とたかをくくって図々しい要求を出すこと、これでしょう。

職場におけるコーチングというのは、対話による説得、あるいは対話による意見調整です。もともとのフォーマットが「歩みより」です。したがって相手に媚びたり、迎合したりしては「なめられる」ことは想像に難くありません。

コーチングはある意味、意見調整の手法です。ですから、片方が自分の主張をどこどこまでも貫く、という硬直した姿勢ではもちろんうまくいきません。しかし、筋の通らないことは断じて認めてはいけません。意見は調整しても、あくまで自分の「あり方」を曲げないことが大切です。

つまり相手の思惑に右顧左眄することなく、自分に正直に、率直に、そして誠実に相手に向き合うことがポイントです。自分の「あり方」を曲げない筋の通った姿勢が相手を説得してしまうわけです。

結局、なめられないためには、誠実さを根底に置いた人格の高さが必要なのだと思います。これなしに居丈高になっても軽蔑され、敬遠されるだけでしょう。

コーチングは最後は人間力、それも首尾一貫したあり方なのだと思いますが、どうでしょうか。

度量
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経営者のとあるクライアントさんです。

不満を言ってきた従業員と対立して、押し問答になったあげく、「仕事続けるの、どうするの」と言ってしまい、従業員はその場で帰ってしまったそうです。

「つい切れてしまった、度量が小さいんだなぁ」と後悔されることしきりでした。後味も悪いでしょうね。

ところで経営者の度量というのは何でしょうか。要するに自分と違った価値観の従業員をどのように料理できるか、ということなのだと思います。つまり対立するので、説得しなければならない。そして説得して納得させる必要があるわけです。

じゃあ、どう説得して納得させたらいいんだろうかという話になりました。

経営者と従業員の違いは何か?これは従業員はもらうもの(給料)をもらったらそれでいいが、経営者はそれでは終わらない、というポイントです。結局、

「君はそれでいいか知らんが、オレの身にもなってくれ。それでは取引先から代金はもらえないし、その結果、君の給料も今後払っていけない」

と、立場の違いに触れるのが一番相手の良心に迫れると考えますが、どうでしょうか。従業員に、経営者の立場を理解してもらうことが、自律的・自発的な社員を育てる基礎になるのだと思います。つまり、「経営者の立場を理解してもらう」こと抜きには、従業員は「もらうものさえもらえばよい」というレベルにとどまるからです

忍耐強く、時には笑いも取りながら、経営者の立場を従業員を納得させられる経営者が、「度量が大きい」ということになります。ここで上下関係に立った「説教」を使うと結果は絶望的です。対等の関係に立った質問型のコーチング・スキルを使うのがベストでしょう。

天気・気温を語ろう
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上司と合わないとか、部下とうまくコミュニケーションが取れないとかいった話題はコーチングでも多いです。なぜでしょうか?私が感じるところについて書いてみます。

職場の会話は2つのファクターから成り立っていると思います。それは「用件」と「情緒」です。たとえば、

「例の件ですが・・・」というのは用件。

「今日は暑いですね」、「最近どうや」というのは情緒。

これがTPOに応じていろいろな比率でミックスされているのが、通常の会話です。ところが往々にして、職場の会話だからというので、「情緒」を一切切り捨てている人が散見されます。仕事だから用件以外のことを話すのに遠慮があり、その結果「情緒」を忘れてしまったのでしょう。

しかし「情緒」がないと潤滑油の切れた機械みたいでうまくありません。たとえば部下との会話でも、

「今日は暑いなぁ」

「最近どうや」

から用件に入るのと、用件だけなのとでは、やはり部下との距離感に差がつきます。

一方部下のほうにしても、

「おはようございます。暑いですね」

の「暑いですね」のあるなしで、上司との距離感に差がつきます。

とは言え、女子社員に向かって、

「今日はきれいだね」

「その髪型いいね」

とやるとセクハラでなくても、いろいろ差し障りがあるかもしれません。

私の提案は、

「天気・気温を語ろう」

です。これだと絶対に問題を生じないでしょう^^

もちろん、天気・気温を語るだけで、職場の人間関係が100パーセント改善するわけではありませんが、用件以外は押し黙っている関係は改善しませんか、というわけです。

依存症
117



たとえばタバコをやめたい、酒をやめたい、○○をやめたい、といった依存性のあるテーマはどう処理したらいいのでしょうか?いわゆる「わかっちゃいるけどやめられない」というやつですね。

カウンセリングという手もあります。しかしカウンセリングはクライアントがカウンセラーに依存して甘えてしまう傾向があり、カウンセリングでは治らない、と私は思います。

むしろカウンセリングが馬鹿らしくなったとき、治癒するのかもしれません。つまり単にやめれば済むことを、カウンセリングに通ってうだうだ言ってる自分に愛想が尽きたときが、治る潮時のような気がします。

コーチングではどうでしょうか。依存症は正面から向き合うと、たいてい負けてしまいます。コーチングでということでしたら、私なら「他のことに熱中する」とか「気を散らす」とかの工夫をクライアントさんに考えてもらいます。いずれにせよ、クライアントさん本人のやる気が第一です。

あとは私個人の感化力がどれだけあるかにかかってくるのでしょう。生きてたらこんなに人生素晴らしいのに、嗜好物程度のことでスポイルしたのではつまらない、と思っていただけたら正解のように思います。

依存性のないテーマもあります。これも本人がやる気を起さない限りどうしようもありません。たとえば部屋が恐ろしく散らかっていて片付かない、と言う人がいました。理由は独り暮らしだし、仕事で疲れているので、片付ける気が起こらないそうです。この場合は工夫はさして必要なく、やればよいわけですから、きっかけのみ提供します。

「じゃあ、早速片付けましょう。どこから手をつけますか」

「何日でできますか」

「いつからやりますか」

という塩梅です。

いずれにせよ、問題解決のカギはクライアントさんの「生命力」にあるのです。何事もそうですが・・・。

フィードバック
116



コーチングでフィードバックという技法があります。社会一般的に言うと「指摘」でしょうか。

コーチングのトレーニングにフィードバックは欠かせません。コーチングではフィードバックは各人の成長になくてはならないものという位置付けです。ですからコーチ業やってる人は、みんなこの技法に一家言持ってい、ます。

フィードバックという言葉の代わりに、評価という言葉を使うと絡んでくる人もいます。ある部分は似ていますが、微妙に違います。客観性重視で、主観的なものはその旨きちんとことわるべし、というところでしょうか・・・

いずれにせよ、フィードバックでも肯定的なフィードバックは問題ありません。反対に、否定的なフィードバックは誰にとっても受け取るのにそれなりに葛藤があり、通常気分の良いものではありません。

よく聞くハナシは、否定的なフィードバックを受けたら、友だちに同じ内容を話して肯定的なフィードバックを改めてしてもらい、それで安心する、溜飲を下げる、のだそうです。誰しもそういったいった一面は持ってますわね。

ただ、私個人は否定的なフィードバックで傷ついても、誰かから慰めてもらおうとはだんだん思わなくなっています。

なぜか?フィードバックは着地点ではなく、あくまでプロセスの一瞬だと考えるようになったからです。どんなフィードバックを受けたか、というのはさして重要ではなく、そのフィードバックを踏み台にして、どうするのかというが、ポイントなのです。

単なる踏み台にしか過ぎないものを後生大事につかんでいることもないでしょう。

コーチングはフィードバックを買ってもらうものだ、とおっしゃる方がいます。

私はそれを言うなら、フィードバックを踏み台にしたソリューションを買ってもらうんだ、と言いたいです。フィードバックはあくまでも経過点です。
150 ケチでなければ
149 神経質過ぎるほどのフィードバック
148 イメージング
147 親は変えられない
146 悪者家族

*
145 話の長い人
144 趣味と親友
143 波間に漂う質問
142 自己の欲求に忠実に生きるとは
141 あくまでも平静に

*
140 ET
139 悪いこともいいことも続く
138 人生の勝利者
137 宗教心
136 クライアントの質

*
135 世の中で一番楽しく立派なことは
134 コーチングは低成長時代の産物
133 盛り立て・盛り上げ
132 断定口調
131 承認

*
130 どうということはなし
129 夫婦の間
128 取次ぎ人
127 老人力
126 宗教的素養

*
125 NLP音痴
124 アサーティブネス(続き)
123 アサーティブネス
122 仕事をしない
121 実習

*
120 なめられないために
119 度量
118 天気・気温を語ろう
117 依存症
116 フィードバック
*
115 差し迫ったニーズ
114 プロマネ
113 咀嚼力
112 ゴールを疑ってみる
111 コーチはトレーナーに非ず

*
110 コーチングの行き着く先
109 恵まれた交友関係
108 仮説力
107 引きつけて撃つ
106 体験コーチングの実際

*
105 体験コーチングというけれど
104 体験コーチング
103 一生懸命を疑おう
102 レベル間の往来
101 ライフ・レベル


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001〜050 051〜100 101〜150 151〜200 201〜250
251〜300 301〜350 351〜400 401〜450 451〜500
501〜550 551〜600 601〜650 651〜700 701〜750
751〜800 801〜850 851〜900 901〜950 951〜999
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