コーチングは切り返しでこなすもの
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CTIジャパンの宇都出さんのメルマガのタイトルが「聴くことの本質・あなたは考えてはいけません」なのですが、このポイントは極意です。

コーチングは切り返しでこなすものだからです。お笑い芸人のとっさの切り返しが参考になりますが、あんな感じです。口先の出たとこ勝負なのです。一見いいかげんなように思えますが、コーチが自分の考えたようにセッションをコントロールしようとするほど、クライアントの役には立たないのです。

コーチングは切り返しでこなすものなので、前回とったセッション・メモなどは何の役にもたちません。記憶に残っていて瞬時に取り出せる内容だけがコーチングに活用できるというわけです。

だから下調べはセッション前にやるべきです。私はクライアントさんがブログを書いているのなら、必ず最近のブログはチェックしてセッションに臨みますが、これは当然のことです。

初心者ほど相手の話を聴きながら、質問を考えようとするのですが、考えているうちはまだまだ発展途上です。質問を考えるコーチングはたいへん疲れるものですが、切り返しでやるコーチングはほとんど疲れません。

私の最高記録は連続5セッションです。切り返しでやっている限り、別に大して疲れるわけでもなく、どうということはありません。もっとも連続5セッションなどはそうそうあるものでもありませんが。

情愛
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よく「儲けようとしても儲からないが、とにかくよい製品やよいサービスを提供しようとすれば、結果として儲けがついてくる」といったことを事業家が発言しています。これに似たことが職場の人間関係にも見出せます。

上司が部下を、

「うまく使ってやろう」

と思っている限り、部下の意欲や能力を引き出すには限界があるのです。そうではなくて、

「なんとか彼の味方になってやろう」

としたとき、部下の意欲や能力は最も理想的な形で引き出せます。ただ上司の気持ちが部下に理解されるには若干の時間が必要なことがあります。もちろん箸にも棒にもかからない、仕事に適性のない部下というのはいます。これは除外しなくてはなりませんが。

上司の意図の根底に情愛が含まれているのか、それとも利害だけなのか、これは誰でもわかります。絶対に隠しおおせるものではありません。犬だって、犬好きの人には吠えずに擦り寄って来ます。しかし犬嫌いの人は吠えられるものです。

私はコーチング講座はいろいろ受講しましたが、当然コミュニケーション技術に終始していて、それを越えたものはありませんでした。寡聞にして、

「人を動かそうと思うなら、相手の味方になってやろうと思いなさい」

という情愛が主張されるのは聞いたことがありません。しかし、ここでひとつ問題提起をしたいのです。コミュニケーションと情愛の2つで上司のタイプ分けをすれば以下の4パターンが考えられます。

@コミュニケーションが巧みだし、情愛がある
Aコミュニケーションが巧みだが、情愛に欠ける
Bコミュニケーションが拙劣だが、情愛がある
Cコミュニケーションが拙劣だし、情愛にも欠ける

@が一番いいのは間違いないし、Cが最悪なのは間違いない。しかしAとBはどちらが優れているでしょうか。これは現代社会にあってはむしろAのほうが優れているように思います。人間関係に変なストレスが加わらないからです。

しかし、Aでは限界があることも事実で、どうしても軽薄な感じが付きまといます。新約聖書のパウロ書簡には「たとい、私が人の異言や、御使いの異言で話しても、愛がないなら、やかましいどらや、うるさいシンバルと同じです」と書かれていますが、その通りなのです。

単にコミュニケーション・スキルを磨いただけのコーチングはこの軽薄な感じが必ずあります。スキルはある程度付け焼刃がききますが、情愛という人間力は付け焼刃がきかないからです。コミュニケーションを改善できた後、ビジネス・コーチングの勝負は情愛というヒューマンなポイントに帰趨するのです。

選択のコーチング
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クライアントさんがAかBかの選択で迷うことがあって、これがコーチングの対象になることがたまにあります。何をしたらよいかわからない、といった内容よりははるかに質問が立てやすく、コーチングとしては楽勝の部類にはいります。

あるクライアントさんのお子さんですが、中学受験をして、第一志望はダメだったが、第二志望はなんとかクリア、本人は喜んでいるのですが、母親であるクライアントさんの胸中は複雑です。

というのも、この人が知人から「第二志望の○○なんか誰でも入れる」と言われたからなんだそうです。

さて、ここからコーチングの出番です。私の最初の問いは、

「第二志望の学校に行くデメリット・メリットは何ですか」

でした。

デメリット
@電車通学になる。通学時間は30〜40分。
A授業料が公立より高い。
B中高一貫教育だが、進学校でないから大学受験に不利。

メリットはよくわからない、とのことでした。

次はデメリットとメリットを「ホントか?」のポイントから検討していきます。まずデメリット@は問題にならないでしょう。デメリットAも共稼ぎのクライアントさんにとって問題なしです。なんと言っても中学の授業料は知れています。デメリットBが一番引っかかっていたようです。

「じゃあ、進学校なら大学受験に有利なんでしょうか。私(杉本)はその昔進学校に通ってましたが、授業についていくのが大変で、中高時代にあまりいい思い出が残っていませんよ。結局、浪人したあげく私立大学に行きましたしね」

この時点でデメリット@〜Bは氷解した感じです。次はメリットです。

「メリットはない、と言われましたが、たとえば私立はいじめが公立よりは概して少ない、というのはどうでしょうか」

「第二志望とは言え、せっかく合格したのに行かなかったら、悔いを残しませんか」

以上を検討して結局、この人は第二志望に進学させよう、と決意されました。他人から「第二志望の○○なんか誰でも入れる」と言われたのが、やはり迷いの元凶だったようです。

AかBかの選択の場合、通常デメリット・メリットを比較して行けばいいわけですが、結局デメリットBのような核心のポイントに煮詰まります。そこにホントか?という検討を加えていくのです。クライアントさんが結論を出しやすいように、コーチが持っている情報を提示できるなら、出し惜しみしないことです。

もし仮に、それでもクライアントさんが、迷って判断に踏み切れないなら、

「私なら□□しますが、どうでしょうか」

と言ってみます。これだってコーチングなのです。決して選択を強いているわけではないからです。

しかし、これは最後にすべきです。早い段階で言うほどコーチングからは遠くなります。ステップを踏みながらクライアントさんがひとつずつ納得していくプロセスがコーチングだからです。

同じ人間として見て味方になる
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某大手メーカーに勤めているクライアントさんとしばらくお付き合いしたことがあります。

この人が夜も眠れないくらいにストレスを感じていたことは、自分の出世や保身のため部下を利用するという風潮が職場に蔓延していたことでした。

さすが大手だけあって、だいたいエリートコースを歩むのはT大出身者なんだそうです。そうした頭のいい?人間は部下の手柄を自分の手柄にして恥じないそうです。こんな上司から体よく利用されることに言いようのないやるせなさを感じるであろうことは想像に難くありません。

いろいろ命じられる表向きの目的は「仕事の成果」です。しかし実際の目的はその上司の出世か保身かに尽きるのだそうです。

こんな組織にあっては、いかに「仕事の成果」を喧伝しようと、その成果なるものは最低に違いありません。こんな組織で成果主義を取り入れようものなら、火に油を注ぐ最悪の結果になるのは見えています。そしてこうした組織ではまず人は育たないでしょう。

クライアントさんの職場は学歴はあっても聡明ではない人だらけというわけです。その会社は大手の割には業績がぱっとしませんが、なるほどそういう病弊を抱えていたんだな、と納得した次第です。

ここからが逆転の発想なのですが、仕事の成果を最大にしようと思えばどうすればいいのか。

まず第一に、部下を利用しようとせず、部下を同じ人間として見て味方になるいうやり方が不可欠であるということがわかります。自分を高く評価してもらうことに腐心することをやめ、部下を支えることに徹するわけです。

上司が自分を利用する対象として見ているのが、自分に味方しようとしてくれているのが、部下はたちどころにわかるものです。それにちょっと考えれば、部下を支えることに徹したほうが、その上司もかえって周囲の評価が上がるのが理解できるはずです。

上司が「部下を同じ人間として見て味方になる」のができることが組織づくりの秘訣なのです。確かに組織の人員の実務能力は大切です。しかしそれ以上に大切なのはこのヒューマンなポイントです。このヒューマンなポイントをないがしろにして、コミュニケーション・スキルだけを改善しても、さしたる意味はないわけです。

上司が部下を「同じ人間として見て、味方になる」組織では上下が一致協力して事にあたることになります。個人が足の引っ張り合いをしている組織よりは総合能力ではるかに上を行くことになります。そしてこんな組織では人も育つのです。

包容力とは
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あるクライアントさんとのセッションでした。その人は自分は自分に合う人、尊敬できる人なら、問題なくコミュニケーションが成立するのだが、そうでない人は自分から壁をつくってしまう傾向があると言われました。

いろいろ話を聴いて、私が感じたのはこのクライアントさんはある意味完璧主義者で、減点で他人を評価してしまうのではないか、ということでした。本人に訊いてみたのですが、どうやら当たりだったようです。

自分の若いころを思い出してみると、私はいわゆる包容力に欠けていたと思います。自分はインテリだと思っていたので、教養のない人は苦手だったし、どうしてもある意味見下す傾向があったように思います。

ですから清掃業務などの汚れ仕事をやっている人に対して、何がしか引っかかるものを感じていたのですが、今はそんなことはなく、対等に親しみを込めて話ができます。流行りの言葉で言うと「箱から出ている」状態に変わったわけです。

今だって上から見ている点が全くないとは言えません。しかしいろいろ失敗したり、窮地に陥ったりしたところを他人から助けてもらう経験を何度も経てきて、昔よりはずいぶん良くなっています。結局自分は特別の存在ではないと思い知ったからでしょう。

何が変わったのかというと、昔は他人はこうあるべきだ、という理想像から減点でその人を評価していたのですが、今はゼロ点からの積み上げで評価できるようになったことがあげられます。

ゼロ点からの積み上げで他人に接することができれば、5パーセントでも10パーセントでも相手と接点があれば、それを肯定的に考えることができます。しかし理想像からの減点で考えたらとても受け容れられるものではありません。ここに包容力の差ができるわけです。

どちらが人間として正しいか、それは間違いなくゼロ点からの積み上げで他人に接することです。自分が特別な存在でない以上、相手を自分の尺度で考えるというのは考えたらおかしな話です。

私の知人に身障者の娘さんを抱えた人がいます。相当重度の障害を持っていると聞いています。この人はその話題を避けているので私は直接聞いたわけではありません。しかし日ごろの言動から、この人は明らかに娘さんをゼロベース評価しているように思われます。減点で評価すれば、それこそ疎ましいだけでしょうが、そうした思いはかけらも感じられないからです。

若くしてこのゼロベース評価が自然に身につけられるわけではありません。人生で試練を乗り越えてある程度修養しないと、身につかないと思います。

人見知りという言葉があります。これは取りも直さず減点評価をやっている証拠です。人見知りは子供や若者などに顕著な現象ですが、大の大人にも見受けられます。失礼ながらまだゼロベース評価にたどり着いていないからだと考える次第です。

カウンセリングやコーチングに従事するなら、このゼロベース評価は必要不可欠だと思います。誰でも相手にできる包容力というのは、ゼロベース評価が身についていて、相手を肯定的にみることができるかどうかということに尽きるからです。
650 コーチングは切り返しでこなすもの
649 情愛
648 選択のコーチング
647 同じ人間として見て味方になる
646 包容力とは
*
645 紙は必要悪だ
644 何度でも言う
643 レッツ(Let's)のコミュニケーション
642 他力による安心立命
641 ホームページの相談

*
640 コーチを演じる自分
639 満48歳、亥年年男
638 女性的な女性
637 認定コーチの合格通知
636 専門を意図的に創り出す

*
635 アサーティブネスのその上
634 椿姫タイプ
633 被害者口調と承認口調
632 早朝営業・深夜営業
631 絶対者とどう繋がるか

*
630 おせちビュッフェ
629 ワンポイントの相談
628 必要なものは与えられる
627 毎回が初回のセッション
626 認定コーチの資格を取得

*
625 離婚とコーチング
624 不遇の時期をいかに面白くするか
623 イエスマンではコーチは勤まらない
622 チャンク・ダウンは問題のすり替え
621 セッションのキャンセル

*
620 沈黙がち、途切れがち、そして暗くなりがち
619 整理整頓が不可能
618 異業種交流会
617 日中何をするのか
616 一家に蔓延

*
615 食あたり
614 自己承認
613 戦意喪失
612 電話勧誘
611 フンとハイ

*
610 日に新た
609 ブログ記事は残った・・・
608 悩める人相手のコーチング
607 顔の見えるサイトを
606 孫引きの感化力

*
605 最も求められている善事
604 サイバー空間の墓標
603 結婚相手を見つけるのもウェブ対策
602 ADDへの提案
601 モード切替の前に前置きを


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