コーチングでいう狭義の引き出しは、もちろんコーチ側が質問することによって、相手に自力で考えさせることです。では広義の引き出しとは?これはコーチ側が答えの一部または全部を相手に渡したうえで、相手に考えてもらうことだと思います。 発明はオリジナルなものを言います。では改善は発明ではないのでしょうか。いや改善も立派な発明です。オリジナルな発明は狭義の発明ですが、改善は広義の発明といっていいのではありませんか。同じ理屈で、ベースとなる答を渡すのも広義の引き出しだと思います。 セッション中、クライアントが純粋に自力で考えるということにこだわるのがそんなに意義のあることなのか、というのが私の想いです。それよりも答えの一部または全部を渡したうえで、それをもとに考えたほうが効率的です。 「下手な考え休むに似たり」です。下手な判断をしないために、だれでも文献を調べたり、ネットで検索したりします。そういう行為は肯定するのに、セッションでコーチが答えの一部または全部を渡すことが、悪だとは到底思えないのです。クライアントが歓迎するなら、何でもありが正解でしょう。 ただし、「クライアントが歓迎するなら」という条件が付きます。私は相手に十分すぎるくらいの答を渡して、それが理由で「あなたとは相性が悪い」と契約してもらえなかった経験もないわけではありません。仕方がなかったな、と思っています。
既に起きている問題ではなく、これから起こるであろう問題について、コーチングしてください、ということを体験コーチングでたまに言われます。たとえば、新しい職場に赴任するとか、新しく部下を持つ、という状況下で、今後どうしていったらいいか、というものです。 コーチングは理想と現実のギャップを解決するために行なうものです。理想は相手から聞き出すことはできますが、相手は具体的な現実を持っていません。まだ起こっていないことだからです。となると、まず言葉の遊びみたいなコーチングになるのは必定です。質問しても相手から具体的なことは何も出てこないでしょう。 そんなのはごめんですから、簡単な心構えや提案といったものを私から解説する、というスタイルにならざるを得ません。私は今までの経験から、いろいろなケースは人一倍知っており、それを紹介することはできるからです。 もちろんこれから起こる問題についてコーチングして欲しい、ということで契約いただいたことはありますが、クライアントさんの問題意識が明確でないために、ちょっとコーチングと違った展開になっています。メンターとしてカウンセリングするという感じです。 やっぱり、問題なくしてコーチングなし、だと思います。問題があってそれを解決しよう、という想いがはっきりしない状態でコーチングはできません。その状態で成立する対話はコーチング以外の何かでしょう。 先日もこれから起こるであろう問題について、コーチングしてください、といわれて結局、私の提案主体の会話になってしまいました。コーチングを学んだことがあるという先方の女性は、 「コーチングとは引き出すものであるはずなのに違和感がある」 と発言しました。そう言われてはあと何を言ってもしかたがありません。とくに反論しませんでしたが、実際は「これから起こる問題についてコーチングして欲しい」という依頼自体に問題ありなのです。
コーチングの普及には必ず「業界を形成する」という努力が不可欠であったと思います。そして業界を形成すれば当然その弊害というのが生じることでしょう。その弊害とは、たとえば資格ビジネスが先行し、その結果として能力のないコーチが量産される、あるいは受講者の大半はクライアントを獲得できず鳴かず飛ばずである、といったことです。 しかし、弊害はあっても間違いなくコーチングは普及し、底辺は嵩上げされつつあることも認めないわけにはいきません。そのなかにあって、私は業界のいわば受益者です。業界の受益者にして、単にその弊害のみを批判するというやり方はフェアーではないと思います。とはいえ弊害に目をつぶるというのもおかしい。結局、コーチとしては独自のスタンスを取ってきました。 私自身のコーチとしてのあり方ですが、孤立型と言ったらいいでしょうか。CTPは受講しましたが、資格取得は最後まで気が進まず、昨年末ようやく取得した次第です。○○コーチ協会のどこにも所属していないし、他のコーチとのコラボといったものも一切やっていません。 本音を言えば、私は他人のコーチングに興味がないし、あまり信用していないのです。だからコラボなんてそもそも無理だと思っています。当然自分のコーチングのやり方にほかから注文つけられるのもイヤです。自分のやり方を通したいのです。だからクラスコーチを務めるのにメンターコーチをつけなかればならない、といった制度にはまるでなじみません。 あくまで個人プレーヤーとしてコーチングに関わることしか興味がなくて、コーチングを組織化することや組織化する企てに加担することには全然不向きなのです。 はっきりしているのは、これでは大したビジネスはできないということです。しかし自分のあり方を否定してみたところで、他のあり方は考えつかないので、今後ともこの路線で、ということになります。 私のようなコーチがひとりくらいいても、それは業界の多様性であり、バランスをとる意味ではそれなりに貢献している、と考えておくことにします。
前回好評につき、再度日経経営セミナーからお声がかかりました。来る5月16日(水)に日経大阪本社で講演します。 http://www.nikkei.co.jp/kansai/delegate/ http://www.nikkei.co.jp/kansai/seminar/kseminar/top118.htm 前回同様ビジネス・コーチングで話をします。前回受講者のなかから仕事をいただきましたし、今回のリピートはうれしいですね^^
パーソナル・コーチングでクライアントさんが持ち出してくる「やらなければならないこと」というのがあります。 たとえば経理の勉強とか、英語の勉強といったものがそうです。こんなのは必要に駆られてやらなければ身につかないし、無理にやってもまず徒労に終わります。とはいってもクライアントさんは大真面目で、目標に掲げて真剣に計画を立てています。 こういうのは「やらなければならないこと」というよりは「やらなければならないと思い込んでいること」に過ぎません。当然私はこうしたことには手を付けず、必要に駆られてやらざるを得ないことに集中するように話を持っていきます。 何かを達成するには無理をせず、日ごろの努力で自然に取り組めることが必要です。ということであれば、「何をやるか」と同様に「何をやらないか」が大切です。戦略とは捨てることです。だから、コーチングで私はしばしば言うのです。 「それ、やめときませんか」 もちろんただ止めるのでははなく、○○に集中するために当面やめておくわけです。 「答えはクライアントのなかにある」は 「クライアントが主張することがクライアントの答だ」 ということではないのです。クライアントを観察すればできないことは自明だ、という答がクライアントのなかにあるのです^^文字通りとらえてはダメなわけです。 |
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750 いいカウンセラーの資質 749 承認の人生と批判の人生 748 後ろ向きの話は短く、前向きの話を長く 747 欠点は改めないで、目立たないように工夫する 746 そこにいるだけで元気の出る人 * 745 あげまん、さげまん 744 承認が承認たりえるためには 743 承認は人格のバロメーター 742 承認と安堵感 741 プラニングは朝一番に余裕をもって行う * 740 マジョリティが年下 739 鳴門・徳島に一泊旅行 738 若さとは 737 「やり方」と「やる気」 736 自分で考えることにこだわる人 * 735 他の助言者を引き合いに出すべからず 734 悔しい経験は明日への糧 733 個人差があるので焦らず頑張れ 732 20代半ばでコーチになれるか? 731 人は言葉によって生きる * 730 わが部屋 729 臨床 作業療法に寄稿 728 一日一件 727 ピンキリの研修講師 726 相手を説得する方法 * 725 納得できない書き方 724 受講者の質 723 グーグル1位に返り咲き 722 何でも誠心誠意やればいいというものではない 721 書評 * 720 ONE ON ONE 719 コーチングは提案で決まる 718 オフハンド・スピーチ 717 ため口 716 日経社告に再登場 * 715 答を渡すのも引き出しのうち 714 これから起こる問題についてのコーチング 713 業界の受益者 712 再度日経経営セミナーに登場 711 それ、やめときませんか * 710 自分を承認できなければ、他人は承認できない、のか 709 コーチングを大所高所から見ると 708 自他の一体感こそリーダーシップの源泉 707 結婚の選択 706 満足できない=人生楽しめない、のか? * 705 セルフ・コーチングはブログで 704 グーグル1位陥落 703 守秘義務 702 仕事をしない工夫 701 型を崩すのもひとつのやり方 *** コーチングを受けてみませんか *** コーチングとは(私見) *** 社会人のためのカウンセリング *** カウンセリングとコーチング *** ビジネス・コーチング入門 *** ライフワーク・コーチングの奨め *** オーケストラ再生のオーディオ *** オーケストラ録音を聴く |
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