![]() 武豊町(愛知県知多郡)に行ってきました。コーチングの研修で呼んでいただいたのです。武豊町は地図のように知多半島の付け根のあたりになります、三河湾に面した海沿いの町で、人口4万ほどです。名古屋からは急行で40分かからないのですが、市町村合併から漏れて未だに町なんだそうです。沿岸部は工業地帯で、地元に産業があるのですが、もちろん名古屋のベッドタウンでもある感じです。 会場は町立の中央公民館で、受講者は知多郡の指導保育士と保育士さんで全員女性でした。私を除いて総勢59名ということでした。 私のセミナーではテクニックを重視せず、外的コントロールと承認を重点的にお話しするのですが、大変熱心に受講いただきました。受講者がすれたオッサンばっかりだと、やたら私語が多かったり、携帯電話が鳴って中座したりするのですが、今回はまったくそんなことはなく、気持ちよく話せました。 60名近くの方に丸一日私の話を聴いていただくというのは、大変ありがたいことだと思います。たまに遠方に研修に行くといろいろな方との出会いがあり、大変充実感を感じます。今回もそうでした。
![]() よく企業研修などで、マズローの欲求段階説というのを教えられます。これは、5つ欲求の段階があり、至高の欲求は自己実現である、というよく知られた理論です。要は「仕事で自己実現せい」と言いたいわけなのだな、と当時の私は理解したため、全然ピンと来ませんでした。 最近世間一般では自己実現というと、単に成果をあげて、利益があがって(つまり金が儲かって)、個人として出世すること、くらいにしか理解していないので、自己実現という言葉は胡散臭くすら感じます。 詳細を見てみます。 @生理的欲求 A安全の欲求 人間が生きる上での衣食住等の根源的な欲求 B親和(所属愛)の欲求 他人と関わりたい、他者と同じようにしたいなどの集団帰属の欲求 C自我(自尊)の欲求 自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求 D自己実現の欲求 自分の能力・可能性を発揮し、創造的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求 往々にして、自己実現は単独で考えてしまいがちです。つまり単に「我よし」であればそれで自己実現と誤解する向きが多いということです。しかし、自己実現は@〜Cが十分満たされた上で出てくる欲求なのです。つまり自己実現は特にCの他人に承認されるという条件が必要だということです。 間単に言えば、「我よし」だけでは人間幸せになれず、相手からあるいは世間から認めてもらう必要があるということなのです。「三方よし」である必要がある、ということです。 「三方よし」を切り捨てた自己実現は、モラル・ハザードを招くと思います。コムスンも不二家も社会保険庁もそうした例なのでしょう。
人間は生まれた直後から、母親の和顔愛語によって自我を育てていきます。つまり和顔愛語という承認は、自我の揺りかごであるわけです。その後も他者とのかかわりのなかで自我を育てていきます。自我を認識するために、他人の承認は必要ですし、他人を承認するという行為ですら、その見返りに自分を承認してもらために行う、と言って過言ではありません。 そうして他者からの承認によって自我が十分育ったら、その段階で自己承認を行うようになっていきます。つまり宇宙の摂理につながった真我を認識するようになり、それが善悪の判断を下すようになるわけです。 つまり、人間同士がお互いを承認したり、されたりは、自我が発する要求というよりは、自我を形づくる欲求と言えます。挨拶する、返事する、うなずく、といった動作は人間を人間たらしめる基本的動作であるわけです。 そう考えれば、引きこもっておれば、人間だんだんおかしくなっていくのは当然です。自我がうまく育たないのです。「引きこもり」という症状は一種の承認不全と考えられます。つまり、他人からうまく承認されないため、孤立する道を選び、その結果自我がうまく育っていない、というわけです。
![]() よほどのうぬぼれやでもない限り、自分自身を仔細に観察すれば、誰でも自分自身は欠点だらけ、と感じることでしょう。 その欠点は実は長所の裏返しでもあって、人間は欠点と共存している生き物です。たとえば、もう少し頭がよければ、もう少し背が高ければ、もうすこし美人なら、ということから始まって、もう少しお金があったら、伴侶にめぐまれたら、子供がいたら、・・・と枚挙にいとまがありません。 ですから、減点主義で自分を採点した日には、不足ばかりです。これでは自分自身を承認できるわけがありません。自分自身を承認しようと思えば、断固加点主義で行く必要があります。 五体満足は減点主義でいけば当たり前ですが、加点主義でいけば、それすらもありがたく思われます。世の中には目が見えないといった人も大勢いるからです。 自己承認とは、欠点だらけの自分にあって、これだけは、というこだわりの長所を前向きに肯定することです。その際、全く他人と比較しないわけにもいきません。といって、あまり他人と比較しては、減点主義になってしまいます。 結局、人間はどの人も、ささやかな長所を拠りどころに生きているわけです。そしてそのためには加点主義は必要不可欠だと言うことです。 さて、人間はこうしたもの、という前提に立てば、人間相手のコミュニケーションはどうあるべきか、というのは自明です。加点主義の立場に立って、サービス精神満点の承認に徹する、のが正しいのです。減点主義に立って相手を批判するというのは、人間相手では全くそぐわないのです。
![]() 誰でも幼いうちは自分を基準にして、減点主義で相手をとらえます。そして自分との相違点は、いじめという方法で抹殺をはかったり、相手を自分の基準に強要したりします。しかし、成長するに及んで、相手は自分と根本的に異なるものと考えて、加点主義でとらえるようになるのです。その結果相手に礼を尽くし、尊重する、といった行動を取るようになるわけです。 人類全体としても同じことが言えます。昔は文化的に遅れた原住民というのが世界に多数存在しました。人類が野蛮であったころは、原住民は略奪・殺戮の対象でしたが、やがて植民地となり、その後自治地区・独立国と変わってきています。 つまり人類も野蛮なころは異民族にたいして減点主義で接していたのですが、文化的に進歩するに及んで、加点主義で接することができるようになってきたわけです。今は原住民の末裔はレアな文化な担い手として、むしろ尊重され、保護されています。 つまり、減点主義を取るか、加点主義を取るかは、その人もしくは人類の精神的な成熟度を表していると考えられるわけです。まとめると、 ・減点主義 = 異質なものであるから、自分に合わせることを強要する = 発展途上 ・加点主義 = 異質なものであっても、自分との相違点を尊重する = あるべき姿 さて、外的コントロールは、自分の基準に合わせることを強要し、そのために責めたり咎めたりすることを言います。まぎれもない減点主義です。その意味では発展途上の未開なやり方であって、人間の人間たる本来の面目に根ざしたものではないと言えます。 簡単に言ってしまえば、外的コントロールは減点主義だから古い、と断じてもあながちまちがいでもなかろうと思うのです。 |
|||||||||||||||||||||
850 スキルではなく意欲に働きかけるのがコーチング 849 まず相手の現状を肯定しよう 848 受身の練習 847 承認の共鳴 846 記憶力の減退 * 845 子供が泣いて連絡が取れない? 844 方便をでっちあげる 843 聴衆1000名 842 心臓を鍛える 841 とりあえず承認しておこう * 840 コーチングも選択肢のひとつ 839 役回り 838 加点主義・原点主義が人生の分かれ道 837 関係改善のやり方はある 836 意欲があるかないか * 835 ライフワークはわからなければぜいたく品 834 まず、変な人に辞めてもらう 833 説得がうまい人 832 国会討論というけれど 831 絶対相手を承認してはいけないコミュニケーション * 830 真我の発動 829 不親切なようでも 828 批判せずに相談しよう 827 単純化 826 存在感の出し方 * 825 チャレンジを続けるところに自己承認はある 824 指摘と批判は紙一重 823 加点主義とあげまん 822 自分をゆるす 821 他人をゆるす * 820 承認は元気の源泉 819 少子化社会は意識的なコミュニケーションが不可欠 818 コミュニケーションでケアしなければならない時代 817 いかにオープン・クェスチョンに慣れてもらうか 816 バランス・シート経営 * 815 氷室の日(7月1日) 814 日常の繰り返しを破る 813 凪 812 「いざとなったら」、このポイントを押さえよう 811 苦手な歯科 * 810 心の法則の誤解 809 夢は他言しない 808 まともな人だけ相手にする 807 逆境に勝る師なし 806 癒しの傾聴はやらない * 805 武豊町 804 自己実現の陥穽 803 承認は自我を育てる 802 人間相手は加点主義しかありえない 801 外的コントロールは減点主義だから古い *** コーチングを受けてみませんか *** コーチングとは(私見) *** 社会人のためのカウンセリング *** カウンセリングとコーチング *** ビジネス・コーチング入門 *** ライフワーク・コーチングの奨め *** オーケストラ再生のオーディオ *** オーケストラ録音を聴く |
|||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||
All copyrights reserved | 2007 Yoshiaki Sugimoto |