999 畢竟何を学ぶべきか



ビジネス・コーチングの研修・講演は何十回となくさんざんやってきたわけですが、最近思うのは結局、「加点主義」というコンセプトのもとに全ての手法(スキル)がある、ということ。根底のコンセプトがその反対の「減点主義」であっては、すべての手法(スキル)は小手先の欺瞞となります。そればかりか、長期的にはマイナスの効果しかないでしょう。

減点主義の場合、どうしても相手を理想からの減点でとらえて、それを矯正せざるを得ません。もちろんそういった側面は必要ですが、これが主となってしまえば、どうしても相手の批判を前面に出さざるを得ません。それ以外にどんなありようがあるでしょうか。

ところが私個人を振り返ってみて、批判してくる相手と円満な人間関係を築けたこともなければ、尊敬したり慕ったりしたことは一度もないのです。ただし、ふだん批判なんか絶対しない人がたまに忠告してくれると、これは素直に聴くものです。

私がプライドが高すぎる異常な人間なのか?どうもそうも思えません。人間似たり寄ったりです。

短所を直す、改めさせるという考え方で相手にアプローチした場合、まず絶対にうまくいかないものです。批判は欠点の矯正に無力である、というのが今では私の信念になってしまいました。だから私は、

「そんなことをするなんて!」

とは言いません。代わりに、

「そうする代わりにこうする方がもっといいよ」

と言うようにしています。

そんなきれい事で片付けば苦労はない、と思えるようなケースはいくらでもあります。しかし、こじれたケースこそ、加点主義で臨めば道が開ける可能性があるのです。減点主義では可能性すらありません。ただし、可能性の感じられない相手は辞めてもらうとか異動させるといった実際的な知恵も時には必要です。

結局、人の欠点などそうそう直らないので、欠点は欠点としてうまくカバーする。それよりも長所を生かす、長所を伸ばすべし、という諦観・達観こそがコーチングという行為の真髄だと言えます。

長所を生かす、長所を伸ばすという考え方で相手にアプローチした場合、自分の語る言葉にレバレッジが働いて、何倍もの効果を生じる。結果として、すべてうまく行くと感じるのです。

このレバレッジを体得するのがコーチングを学ぶ意義のアルファであってオメガであると信じています。結局、減点主義の人間観・人生観から加点主義の人間観・人生観に転向できた時に、

ビジネス・コーチングが身についた

ということだと考えます。ただし知恵のない加点主義は理由のない楽観主義に堕してしまう傾向はあります。だから、たゆまず自分自身を磨くという姿勢も必要です。加点主義だけでもダメなわけなのです。しかし、加点主義がない限り、コーチングの全てがない、と言っても過言ではないでしょう。

998 信によって立つ



最近倫理法人会のモーニング・セミナーに通うようになりました。5時起きが必要ですが、今日で3回目でした。

今日の講話でのエピソードが大変印象に残りました。あるところで、

「理想の上司はどんな人」

でアンケートを取ったところ、次の3つが上位に来たそうです。

@信頼できる人(正直な人)
A仕事を任せてくれる人
B話をよく聴いてくれる人

とにかく「信頼できる」上司のもとで働きたいという声が圧倒的に多かったそうです。決して「能力のある人」ではなかった点がポイントです。

もちろんボンクラでは上司は務まらないのですが、ある程度の能力があれば、信頼できる高潔な人格が第一の資質と言えそうです。つまり上司の能力的な弱点は、「信頼できる」高潔な人格があれば、部下のカバー(補佐)を引き出しうる、ということだと思われます。

ABも上下の信頼関係から派生するポイントであることは明白です。

ひと言で言えば、策を弄するよりは、

「信によって立つ」

ということなのだ、と私は理解しました。しかも柔軟な心で、皆の知恵を引き出す。そのためにはよく聴いて、誰とでもよいコミュニケーションを築いていくということなのだと思います。

この話をされた方は71歳でコーチングの勉強を志され、72歳で生涯学習開発財団の認定コーチを取得され、現在75歳という経営者でした。もちろん名刺交換をさせていただきましたが、いろいろな意味で意を強くしました。

私個人も策を弄するよりはまず人格を磨け、という指針を拠りどころで一応来ています。人格を磨いて「信によって立つ」というのは、周囲の助力を引き寄せる上、自浄能力もある。よこしまな考えを引き寄せません。やはり最高の戦略にして王道、という気がします。

997 今やってることと陸続き



よく聞くのが、

「人生に無駄な体験はひとつもない」

ということ。後になって振り返れば、経てきた紆余曲折はすべて今の自分と繋がっていて、今の自分の基(もとい)であるという意味です。

ならばこんなふうにも言えるでしょう。自分の進むべき方向は今の延長上にあって陸続きである、ということです。全くやったことのないような突拍子もないことに答えはない、ということになります。

よくインターネットのサイトを経由して、自分はこれからどう進んだらよいか、と尋ねて来られる方がいます。もちろん今の自分の現状に満足していない。

「今あなたが満足できてないことはどういうことですか」

「今の延長上で、その満足できないことを満足できるように一ひねり、二ひねり工夫したのがおそらくあなたの答えでしょう。後は自分で考えるしかない。あなたの答えはあなたにしかわからない」

「とりあえずは勢いでもいいので、決めて、走る。間違ってたら間違ってるという導きがあるし、
合っていれば合っているという導きがあるものですよ」

こう言うとまず大抵の人は納得します。ただ納得した結果、元気を出す人と、

「やっぱり人に相談してもダメなんだな」

と思い知って元気がなくなる人がいます。しかし、いずれにせよ、

「今やってることの陸続きで、自分の五感にピンと来ること」

これが当面の答えであることは間違いありません。当面の答えは究極の答えではなく、中間ステップであることも多いが、中間ステップを経てはじめて究極の答えに行き着くのでしょう。だから、

「とりあえずは勢いでもいいので、決めて、走る」

これを促して体験コーチングは終了することにしています。


996 わかっていても問いかける



「コーチングは自発的行動を促すコミュニケーションの技術です」

この定義がひとり歩きしていて、コーチングに「尋問」のイメージを持つ人が多いようです。私のサイトから連絡を取ってくる人のなかにもそんなふうに思っている人が結構おられるようです。私は以下のように補足説明しています。

「要はふたりで作りあげることなんですよ。『私質問する人、あなた答える人』ではないですよ」

こう説明すると、思っていたのと違った、という感想がよく返ってきます。

これが職場のビジネス・コーチングの場合だと、「ふたりで作りあげる」以前にもっと基本的なことがあります。それは、

「わかっていても問いかける」

という姿勢です。わかっていても問いかける、こうしたちょっとアホっぽい会話がコーチングなのです。そんなこと聞かずともわかってるでしょ、ということを敢えて聞いていく。たとえば、

「○○しようと思うんだが、どんなものかな」

という問いを上司は敢えて発する。その行為が付加価値を生むのです。部下から返って来た答えが:

「それはもう必要ないですよ」

という想定外の内容だったら、何がしかの 改善効果を生みます。また逆に、

「それはこうすればいいんじゃないですか」

という想定内だったら、 部下を納得させる納得効果、部下を教育する教育効果が見込めます。コーチングが浸透している職場は、とにかく話しやすく、コミュニケーションが十分です。そうした風土が目に見えない付加価値、つまり意欲や発想といったものを刻々生み出していく、というわけです。
999 畢竟何を学ぶべきか
998 信によって立つ
997 今やってることと陸続き
996 わかっていても問いかける
*
995 祈りて願ふ事は、すでに得たりと信ぜよ、さらば得べし
994 人見て法説け
993 長く続けたほうが勝ち
992 よくある話ですね
991 良きクライアントは良きコーチである

*
990 夢や目標がない
989 出会いと転機
988 外に出て行くべし
987 プロのコーチは昼間は何をしているのか
986 コーチングの金銭感覚

*
985 先制攻撃
984 自己啓発セミナー系社員研修
983 転職でコーチング
982 人事を尽くして天命を待つ
981 外的コントロールに対する社会一般の認識

*
980 優雅さということ
979 控える・持ち上げる
978 短所を直す・長所を伸ばす
977 コーチングの認定
976 コーチングの研修

*
975 自分に寛容であれ
974 他人のふんどしで相撲をとる
973 フィードバックは北京ダックのようなもの
972 英語の勉強
971 便所の落書き

*
970 無能であっても理解ある上司
969 西はりま天文台
968 出ました、2.0
967 プラスアルファ
966 自分をつくらず正直に

*
965 鉢のとれた鉢かづき
964 学びは受身ではなくて取りに行く
963 今年は歩こう
962 すんだことだし、もう忘れましょうよ
961 星空ウォッチング

*
960 想いは現実化する
959 「決める」までがコーチング
958 ナバホ族の精霊
957 日経経営セミナーに4度目の登場
956 心で見る

*
955 「気」の良さ + 自負 = 感化力
954 相反する価値観の使い分け
953 2008年はアウトドア元年
952 リアルとバーチャル
951 “I”メッセージは舌禍を最低限に抑える働きがある


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All copyrights reserved 2006 Yoshiaki Sugimoto