■ 無数にあるお袋の味

　インドでは、カレーは家庭料理であり、無数にある香辛料の組み合わせで作られるカレーの味は家族の数だけ存在するといわれています。
　しかも、インドの人は自分の家庭の味を決して忘れないそうです。
　ある番組で、それが事実かどうかを検証していました。

　番組の企画では、解答者として留学生や貿易関係の仕事で来日していると思われる在日インド人が８名程度出演。
　一方、来日した彼らのお母さんと日本のインド料理店のシェフ１人がカレー作りのために出演していました。
　息子達と母親＋シェフはそれぞれ別室に分かれており、息子達が試食して親のカレーを当てるというものでした。
　勿論、息子達は母の料理を久しく食べていないという条件です。

　ばかばかしいかもしれませんが、妙にのめり込んで見てしまいました。

　母親達がカレーを作っている間、調理室を映し出すモニターに釘付けになる息子達
　（といっても成人していますが・・・）。
　そこには恥ずかし気もなく「今僕のお母さんが映った！」とはしゃぐ息子達の姿。
　確かにカレーの色や具だけでも特徴があるものもあれば、見た目には見分けがつかないものまで様々なカレーができあがりました。

　そして試食。

　その間、調理室では試食する息子達を映し出すモニターに釘付けになる母親達。
　そこにはモニターに映った自分の息子を指差し自慢げに話し出す母親、お互いの息子達の姿を見て感極まり涙しながら抱き合う母親同士の姿・・・。

　試食が終わると自分の母親が作ったカレーを選び、答え合わせ・・・。

　　■ 結果発表

　息子達は自分が選んだカレーを持ち、そのカレーを作った人が一人づつ登場します。
　緊張の一瞬のはずなのですが、息子達は皆絶対に間違っていないと確信している様子。
　息子達からは、緊張しているというより、母親に早く会いたいという気持ちの方が先立っている様子。

　結論から云いうと、一人を除いて皆正解。たった一人だけがインド料理のシェフが作ったカレーを選んでしまいました。

　間違えた回答をした息子の母親は、息子が選んだカレー（インド料理のシェフが作ったカレー）を試食して納得したように説明を始めました。

　　■ 間違えた？理由

　理由はこうでした・・・。


　彼の実家は万年雪が積もる山の麓にあり、母親は幼い子供達の体調を気遣い、体を温かくしてくれるハーブを入れたカレーを作っていたそうです。
　しかし、今では子供達は皆成人し、カレーにはそのハーブを入れなくなったそうです。
　そして今回母親が作ったカレーはハーブ抜きのカレー。一方、インド料理店のシェフが作ったカレーには、見た目、味ともに大変似たカレーになっていた上に、子供の頃に入れていたハーブが入っていたそうなのです。


　つまり、不正解だった息子は、母親が作ったカレーを選びはしなかったものの、おふくろの味そのものを忘れてはいた訳ではありませんでした。

　「ふぅん・・・あっそ！」と言われそうな話でしょうが、
　私としては忘れかけていた温かいものを思い出させてくれる番組でした。

　みなさんはおふくろの味といわれると何を思い出しますか？
　おふくろの料理ではなくても、昔を思い出させてくれる料理や忘れられない味ってありますよね・・・。