■ ズボンを探しに・・・

　結婚式直前まで仕事でバタバタしていたため、挙式後、直接向かう新婚旅行のスケジュールを全く把握していなかったことが発端です。

　Ｇパンだけしか持っていかなかったのですが、スケジュールに組み込まれていたディナークルーズには
　"カジュアルお断り"の注意書きが・・・
　気付いたのはクルージングの前夜・・・

　添乗員なしのツアーだったため、翌朝、近くのＪＴＢ窓口にかけこみ、
　「Ｇパンでは絶対ダメなのか？フォーマルじゃないとダメか？」など質問・・・
　「Ｇパンでは少し気が引けると思いますよ。綿パン・ポロシャツぐらいなら大丈夫だと思います・・・」との回答。


　散策する予定をあきらめ、それなりに見える綿パンを求めて地元のショッピングモールへとかけこみました。

　探し当てた大きなショッピングモールには、”ＤＡＩＭＡＲＵ”の大きな看板と孔雀のマークを発見！
　"大丸ピーコックやんか！？日本語通じそうやな”と少し期待・・・
　しかし、見事にその期待は裏切られました。

　いくら大きいとは言え、もともと地元の人しか使わないようなショッピングモール。
　サービスカウンターらしきところでも日本語は通じませんでした・・・

　とりあえず、大丸館内に入り、紳士服売り場に向かいました。
　服を選び、カタコトとゼスチャーを駆使して試着にこぎつけました。
　しかしそのとき、日本人の悲しい事実が浮き彫りに・・・

　そこで一句
　−−　試着して　鏡に映る　その姿　チョンマゲつければまるで御奉行様　−−

　「すそが長いので切って欲しい」といいたいところ・・・
　どういえば良いのか考え、躊躇したものの、腹をくくって「エクスキューズミー！（関西弁風）」と叫んだ。
　気付いて来てくれた店員が"May I help you？"と言ったかどうかは定かではない・・・

　とにかく、「すそが長いので切って欲しい！」

　"I want to cut and sewing.Becouse ・・・

　（ソーイング言うてもた・・・裁縫っておかしい表現ちゃうか？）
　（そんなこともうええわ。それよりビコーズ言うてもた・・・理由いわなアカンやん！？）
　（すそが長いて言いたいネン。）
　（すそってどういうネン？）
　（言い換えたらええねん・・・ズボンが長い・・・）
　（ズボンってパンツって言えばええんか？）
　（パンツ言うたら恥かくんちゃうか？）
　（もっと確実でわかり易い表現って・・・？）
　（ええい！）

　"Becouse・・・ My leg is short！"
　（御奉行的なコミカルアクション付きで短足自慢してしもた）

　始めキョトンとした店員と妻・・・
　しばらくして
　店員が我慢しきれず吹き出す始末・・・

　でも気のよさそうな男前の店員は
　"O.K O.K"
　すそを切る高さにクリップで目印をつけてくれました。

　　■ 仕上がりは・・・？

　とりあえず、着替えなおしながら、
　いつ頃できるか聞くの忘れてた・・・まぁナントカなるか・・・
　でも、「何時くらいにできますか？」ってどういういねん？

　"What time ・・・?"
　"When ・・・?"
　"How long ・・・？"
　ウムムムム・・・

　ええい！
　"How long can you cut and sewing ?"
　（仕上がりはいつか？と気いたつもり・・・）
　　ニコヤカな店員の頭には？？？が渦巻いている様子。

　じゃぁ・・・
　"When can I get it？"
　（いつもらいにくればいい？と気いたつもり・・・）

　今度はなんとか意図はくんでくれた様子。
　店員は相変わらずニコやかに"one week."と回答。
　こちらも鼻にかけてフフッン と合いの手。
　・・・・
　えっ？１週間って！？オーマイガッ！

　慌てて店員に懇願。
　"I want this one today！"
　"Still today's evening！"
　（今日欲しい！今日の夕方までに欲しい！と懇願・・・したつもり）

　店員は困った顔で一旦引き下がったものの、
　"O.K！"
　と陽気に戻ってきて何やら吉報らしきことを伝えてくれている様子・・・
　早くて何を言っているかわからないが、
　"Follow me！"と、付いて来な！と言っているゼスチャー

　店員は店だけでなく大丸の建物を出て、ショッピングモールの中を縫うように小走りに進んでいった。
　とりあえず、後をついていく私達・・・

　途中、店員は私に向かって話しかけた。
　"Are you Japanese？”
　私が"Yes."と答えると、彼は嬉しそうに
　「ワタシ イマ ジャパニーズ ベンキョーチュウ デス」
　それに対し「そうなんやぁ」と関心する私。
　・・・
　「えぇぇぇ！日本語しゃべれるやん！」とモロ関西弁でサプライズ。
　「テョット ダケネ。ホントニ チョット。」だと。

　「十分受け答えできてるやん！
　　もしかして、さっき困ってたときの独り言もわかってたん違うの？」
　と聞くと、
　「テョット ダケネ。ホントニ チョット ダケシカ ワカラナカッタヨ。」
　だと。

　　■ なんとかなるの？

　その後、「カタコトの日本語を話すアーストラリア人」ＶＳ「ゼスチャー付きカタコト英語の日本人」の奇妙な会話で盛り上がった。
　彼が日本語を勉強している理由は、日本語ができると、日本人観光客を相手にした仕事ができ、それが結構いい儲け仕事になるんだとか・・・
　それに、彼はオーストラリアから出たことがなく、いつか海外にいってみたいらしい。
　目下のところ、日本への留学が希望らしい（御世辞半分かもしれないが・・・）。

　また、彼がいた紳士服売り場には、すそ上げのサービスはなく、必要な場合は専門のお店に外注しているらしい。（本来、股下サイズが合うものを買うため、切る必要がないのだろう・・・）
　案内してくれているのは、モール内の服の修繕屋さんのようだ。

　しかし、よくここまでの会話（ゼスチャー）？ができたものだと後になって感心する始末。

　しばらくして目的の店に着いた。

　彼は服の修繕屋の店長らしき女性に事情を説明してくれている。
　説明しながら彼は私に綿パンを渡し、試着室に入るよう促した。
　私はそれに従ったが、着替えている最中、彼が店を出て行く気配が伺えた。
　私は慌てて試着室から叫んだ。御礼を言ってない！

　"Hey！Jack（だったと思う・・・）！Please come back！"
　彼は"What？"と引き返してくれた。
　私はＧパンを脱いだまま、試着室のカーテンで下半身を隠して、顔だけを出していた。
　"Jack.Thank you very mach! I'm glad to meet you"
　（ジャック本当にありがとう！本当に会えてよかった。のつもり）

　”そうや！確かこんなときはチップ渡さなアカンのんちがうか？”
　”でも、失礼違うかなぁ・・・”
　と不安を抱きながら慌ただしくポケットから出てきた１０ドル紙幣を渡した。

　彼は”ワオ！”と、気持ちよく受け取ってくれ、

　"Thank you！・・・"
　（確か、Have a good trip！ と言ってくれていたような気がするが・・・）
　とにかく、私に向かって手を合わせて会釈してから店を飛び出て行った。

　その後、修繕屋の店長も気さくで気持ちよく対応してくれた。
　出来上がりまで２時間くらいだったと思う。
　その間、きれいなショッピングモールをウロツキ、
　意外と時間が早く過ぎた。

　なんとかクルージングに間に合い、いざ乗船。

　しかし、周りの日本人は小奇麗な服装ではあるものの、それ以外の人達はＧパンも多数混じっていた・・・

　「どういうことや！？」